アルコールと脂質代謝・動脈硬化
アルコール摂取による脂質代謝において強く影響を受けるのは、トリグルセライド(TG)とHDLコレステロールです。LDLコレステロールは比較的変化しません。摂取されたアルコールはADHによるエタノール代謝の際に、NADHが産生され、ミトコンドリア内のNADHが過剰にとなり、NADH/NAD比が上昇すると、TCA(tricarboxylic acid:トリカルボン酸)サイクルが抑制されることにより、アセチルCoA(acetyl-coenzymeA)が蓄積します。その結果、脂肪酸分解が抑制されます。またアセチルCoAは脂肪酸合成促進にも利用され、アセチルCoAの蓄積が脂肪酸合成促進と分解抑制の両者に関与しており、脂肪酸が増加しVLDLとして血中に放出されトリグリセライドが上昇します。
さらに肝細胞のミトコンドリアにおいてNADHを酸化する経路として、ジヒドロキシアセトンリン酸から具リセロール3リン酸に変換する反応が存在しNADHが増加することによりこの系が活性化され、グリセロール3リン酸が増加しアシルCoAと結合しトリグリセライドとなり合成が増加します。
HDLコレステロールは少量から中等度の飲酒では増加するといわれていますが、その機序としては、肝臓におけるアポリポ蛋白ATとAUの合成亢進、肝性TGりパーゼ(HTGL)活性の低下、コレステロールエステル転送蛋白(CETP)活性の低下、さらに一部にはリポ蛋白リパーゼ(LPL)活性の亢進などが考えられます。しかし、大量飲酒では高トリグリセライド血症を悪化させ、CETPの作用によりHDLコレステロールが低下します。