アルコール飲酒による高尿酸血症・痛風
アルコール摂取が尿酸値を上昇させることはよく知られています。アルコールを毎日飲む人は痛風の危険度が2倍上昇し、特にビールを飲む人は頻度が高いとされています。アルコール飲料中のプリン体含有量としては、通常のビール1缶(350ml)当り12〜25mg、紹興酒では180ml当り21mg、地ビールで330ml当り19〜55mg含まれます。我が国において成人男性の約20%が高尿酸血症を呈し、その1%が痛風を発症しています。
プリン体とは、生物が存在するために必要なエネルギー(ATP、GTPなど)や核酸(DNA、RNA)の原料となる重要な物質です。プリン体の代謝は、肝臓での生合成と食事からの摂取の2つの経路が存在し、ヒトではプリン体は分解・異化され、最終的には尿酸となり腎臓から排出されます。
高尿酸血症の病型としては、尿酸の産生が亢進している場合を産生過剰型、尿酸の腎排泄が低下している場合を排出低下型、両者とも存在する場合を混合型といいます。日本人の場合排泄低下型が60%と多く、混合型は30%、産生過剰型は約10%と少ない。
アルコールによる高尿酸血症のメカニズムとして1)大量飲酒の際に代謝過程で乳酸が増えた結果、尿酸の排泄を妨げる。2)エタノールの代謝過程で生体内のATPを消費し、アデニンヌクレオチドの分解を促進させるという2つの原因が考えられます。
腎臓の糸球体でろ過された尿酸は、近位尿細管で90%が再吸収され、残りが尿中に排泄されます。このメカニズムにおいて尿細管上皮に存在し、特に尿酸に親和性の高い尿酸トランスポーター1(URAT-1)の存在が注目されています。尿酸降下薬であるプロベネシドやベンズブロマンはURAT-1を抑制することで尿酸の再吸収を抑制し排泄を促進させますが、アルコールのURAT-1に対する影響は今後の検討が求められています。また、乳酸、ピラジンカルボン酸、ニコチン酸との交換により尿酸の転送を促進させるといわれ、再吸収を促進して排泄を低下させると考えられています。
尿酸値が内蔵脂肪の増加やアディポネクチンの分泌低下と関連するなど、高尿酸血症においてはメタボリックシンドロームとの関連が注目されています。また、インスリン抵抗性との関連として、内蔵脂肪の増加により高インスリン血症をきたした結果、腎尿細管のナトリウム/有機アニオン共用トランスポーターを介してナトリウム再吸収が亢進します。その結果、有機アイオンの再吸収が亢進することにより尿細管細胞内の有機アニオン濃度が上昇し、URAT-1による有機アニオンと尿酸の交換が促進されて、尿中の尿酸排泄量が低下し血清尿酸値が上昇するともいわれています。
高尿酸血症自体はメタボリックシンドロームの診断基準に入っていませんが、高尿酸血症がメタボリックシンドロームを悪化させることは明らかであり、高尿酸血症の診療ガイドラインに従い、アルコール大量飲酒者も含めて、動脈硬化予防に対する適正な治療・生活指導が重要と考えられます。