高感度PTH(HS-PTH)
副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone:PTH)は最も重要なカルシウム調節ホルモンであり、副甲状腺で115個のアミノ酸からなるpreproPTHとして合成され、90個のアミノ酸proPTHを経て84個のアミノ酸、分子量約9.5kDaのタンパクへと変換されるペプチドホルモンです。完全分子型である場合はPTHインタクトと呼ばれ、蛋白分解酵素によりN末端、C末端、中間部の三つのフラグメントに分解されます。
PTHはN末端に生理活性を有し、C末端フラグメントは生物学的には不活性ですが、血中半減期が長く安定です。一方、C末端フラグメントは腎より排泄されるので、腎不全例では排泄不良のため血中で高値をみることがありますが、インタクトはその影響を受けにくく、また生理的活性があるので現在では最もよく測定されたいます。ただし、不活化を防ぐために採血後ただちに冷却下で血漿を分離する必要があります。
PTHは血清カルシウム濃度の恒常性を維持するホルモンであるため、カルシウム値は原発性副甲状腺機能亢進症で高値になり、低下症では低値になります。また、外的要因に対してこの恒常性を維持するためPTH濃度はカルシウム濃度を正常化する方向に働きます。このため、低カルシウム血症の場合にPTHは上昇し、高カルシウム血症の場合は低値になります。
一般的に副甲状腺機能低下症の場合は、低値側に感度がよい高感度PTHを測定した方が有用です。
また、悪性腫瘍に合併する高カルシウム血症の場合は、アミノ酸141個からなるPTH関連蛋白(PTH-rP)を腫瘍が産生している場合がしばしば存在するので、その場合にはPTH-rPを測定します。
検査材料:EDTA血漿
測定方法:IRMA(ビーズ固相法)
基準値:単位 pg/ml 90〜270
・PTH上昇でCa上昇
原発性副甲状腺機能亢進症、CASR遺伝子不活性型変異(家族性低Ca血症、新生児重度副甲状腺機能亢進症)、異所性PTH産生腫瘍
・PTH上昇でCA低下
慢性腎不全、骨形成性骨転移、ビタミンD欠乏、ビタミンD依存症、偽性副甲状腺機能低下症、ビスフォスフォネート製剤などの薬剤
・PTH低下でCA上昇
ビタミンD製剤過剰投与、悪性腫瘍に伴う高Ca血症、サルコイドーシスなどの肉芽腫性疾患、不動性高Ca血症、甲状腺機能亢進症
・PTH低下でCA低下
PTH不足性副甲状腺機能低下症、CASR遺伝子活性型変異、低マグネシウム血症、特発性副甲状腺機能亢進症