オキシトシン(oxytocin:OT)
オキシトシン(oxytocin:OT)は、9個のアミノ酸からなる下垂体後葉ペプチドで末梢組織ではホルモンとして、中枢神経では神経伝達物質、神経調節物質として作用します。その構造は二つのシスティン(Cys)を含み、それぞれの硫黄原子が結合して(ジスルフィド構造)大きな環を作っています。オキシトシンは視床下部の室傍核と視索上核の神経分泌細胞で、輸送タンパク質であるニューロフィジンTに結合した不活性前駆体として合成され、神経細胞内を軸索輸送され、下垂体後葉に蓄えられています。
オキシトシンの遺伝子がクローニングされ分子生物学的手法による解析が進んだ結果、オキシトシンは下垂体後葉だけでなく、子宮・胎盤・羊膜・黄体・精巣・心臓など末梢組織でも産生されることが解りました。その作用として子宮収縮や射乳作用はよく知られ、ほかにも脂質代謝におけるインスリン様作用、腎からのナトリウム利尿などのさまざまな作用が認められていますが、いまだその生理的意義や臨床的意義に関して十分に解明されていません。
日内変動は男女ともに夜間睡眠時に高値を示し、性周期では卵胞期で黄体期に比べて高値を示します。また、一般的に妊娠が進むほど高値を示し、出産直後は速やかに低値に戻りますが、授乳時の乳首への吸入刺激により高値を示し射乳を誘発させます。
検査材料:血漿
測定方法:RIA(二抗体法)
基準値:単位μU/ml 非妊婦 5以下 妊 婦 3〜200
※食後1時間以上経過後採血。血液1mlに対しオキシトシン添加剤2滴の割合で添加し、混和後氷冷。冷却遠心器にて血漿分離 。
・高値を示す病態
SIADH(ADH不適合分泌症候群)、胞状奇胎、切迫流産、悪性腫瘍(オキシトシン産生)
・低値を示す病態
汎下垂体機能低下症