尿素呼気試験 ヘリコバクター・ピロリ感染症
尿素呼気試験は、胃十二指腸潰瘍の原因菌、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori: HP)の感染を、呼気中の成分から診断する検査です。
胃内は胃酸によりpH1〜2の強酸性になっています。これは普通の細菌にとって非常に住みにくい環境で、HPは強力なウレアーゼを産生し、自らアンモニアを作ることにより周囲の胃酸を中和して主に胃粘液内や被蓋上皮細胞に棲息しています。このウレアーゼ活性を利用してHPを検出するのが尿素呼気試験です。
手順は、まず投与前の呼気を採取します。次に尿素の安定同位体である13C標識尿素を服用し、10〜20分間安静にします。もし胃内にHPが棲息していると、HPが持つウレアーゼにより、この13C標識尿素が分解され、13Cで標識されたCO2となって血流に乗り肺に運ばれ呼気中に放出されます。この呼気を採集し、13C標識尿素の投与前、投与後の13CO2含量変化を測定します。
13Cの検出には質量分析計(GC-MS)や赤外部分光法(IR)が用いられ、一定量以上の増加があればHP陽性と判断されます。
HPに感染していない場合や、菌が死滅した場合、ウレアーゼ活性を失った場合は、13C標識尿素は分解されないため、呼気の13CO2含量も増加しません。
尿素呼気試験は、感度・特異性において、抗体価測定より優れ、内視鏡による胃粘膜採取に匹敵する精度をもっています。内服と呼気排出という簡便さで被験者への負担が少ない検査法であり、HP感染の診断や除菌効果の判定に優れた検査です。
検査材料:呼気
測定方法:IR(赤外吸収スペクトロメトリー)
基準値:単位(‰) 2.5 未満
高値を示す病態:ヘリコバクター・ピロリ感染症
(胃十二指腸潰瘍、慢性萎縮性胃炎、胃癌、胃MALTリンパ腫などに深い関連があるとされる)