新型ドライアイ 眼表面に傷が見られないBUT短縮型ドライアイ
ドライアイとは、様々な要因による涙液および角結膜上皮の慢性疾患であり、眼不快感や視機能異常を伴うと定義されています。「眼が疲れる」「眼がごろごろする」「眼がしょぼしょぼする」などの訴えのほか、「夕方になると眼が見えにくい」など、一時的な視力低下も見られます。コンピューターを使ったオフィスワークが当たり前の現在、ドライアイの患者は増え続けており、国内での推定患者数は約800万人、試算によっては約2200万人に上るともいわれています。
ドライアイは「涙液分泌減少型」と「涙液蒸発亢進型」の2つに大別されます。
涙液分泌減少型ドライアイでは、通常は反射性に分泌される涙液が分泌されなくなり、眼表面に傷が付き、常時乾燥や異物感などの症状に悩まされます。リスク因子は、加齢や、降圧薬、抗うつ薬、尿失禁治療薬などの抗コリン薬の常用、糖尿病性網膜症(重症の場合、涙液の反射性分泌機能が低下)、ストレスなど、多岐にわたります。シェーグレン症候群の眼症状もこのタイプに含まれます。
一方、涙液蒸発亢進型ドライアイは、主にパソコン、コンタクトレンズなどの環境要因によって起こり、患者数は徐々に増加しています。乾燥しやすい冬場は患者が多くなるほか、エアコンの送風などもこのタイプのドライアイの原因となっています。パソコンについては、画面を凝視し続けることで、まばたきの回数が通常の1分間に20回程度から5〜6回にまで減少し、涙液が蒸発しやすくなることによっておこります。コンタクトレンズについては、特にソフトコンタクトレンズの方が乾燥しやすく、装用者の約8割に乾燥感があるといわれています。
さらに最近は、上記の2つのドライアイとは異なるタイプの「BUT(Breakup time:涙液層破壊時間)短縮型ドライアイ」に注目が集まっています。通常、まばたきの後には10秒以上涙液層が角膜上に保持されますが、このタイプのドライアイの患者の場合、涙液の分泌量に異常がなくても、すぐに涙液層が破壊されてしまいます。
眼表面のムチンは、結膜の杯細胞で産生される分泌型ムチンと、角膜表面の「水濡れ性」を保つ働きを持つ膜型ムチンの2つに分けられます。BUT短縮型ドライアイの患者は、この膜型ムチンの機能が低下していると推測されています。また、眼表面に目立った傷が見られないのもBUT短縮型ドライアイの大きな特徴といえます。