家族性アミロイドーシスの治療薬 タファミジス - タファミジスによるTTR-FAP治療は、これまで多くの神経疾患で行われていたような単なる症状の緩和を目指すものではなく、病態そのものを阻止することにより疾患の進行抑制を目的としています。

家族性アミロイドーシスの治療薬 タファミジス

家族性アミロイドーシスにはいくつかの病型が知られていますが、そのほとんどがトランスサイレチン(TTR)遺伝子変異に起因する常染色体優性遺伝のTTR型家族性アミロイドポリニューロパチー(TTR-familial amyloid polyneuropathy:FAP)です。従来、限られた集積地のみに認められる非常にまれな疾患と考えられていましたが、近年の診断技術の進歩により、比較的頻度の高い遺伝性ニューロパチーであることが明らかになっています。
TTR-FAPの主な症状は、多発ニューロパチーによる四肢の感覚障害と筋委縮、自律神経障害による消化管運動障害と起立性低血圧、心伝導障害や心不全などの心症状です。

血中のTTRはそのほとんどが甘草で産生されることから、1990年にスウェーデンではじめてTTR-FAPに対する肝臓移植療法が試みられ、その有効性が実証されました。しかしながら肝移植には1)ドナー不足、2)患者および生体ドナーに対する精神的・身体的な侵襲、3)移植後のアミロイドーシスの進行などの問題が存在します。さらに診断の遅れや年齢などの理由により約8割の患者が移植手術の適応となりません。

TTRアミロイド形成の機序としては、TTR蛋白の天然構造である四量体が単量体に解離し、解離した単量体が変性することにより線維が形成されると考えられています。また、TTR-FAP患者ではTTR遺伝子変異により四量体構造が不安定となり、アミロイドーシスを発症することが明らかになっています。
タファミジスメグルミン(以下タファミジス)は、TTR四量体に結合することにより四量体構造を安定化させ、アミロイド繊維形成を阻害する薬剤です。タファミジスはプラセボに比較して有意に患者の末梢神経障害の進行を抑制すること、および栄養状態の指標であるmodifiedBMIを改善させることが明らかになりました。タファミジスは2013年11月には本邦でTTR-FAP治療薬として認可されています。
タファミジスによるTTR-FAP治療は、これまで多くの神経疾患で行われていたような単なる症状の緩和を目指すものではなく、病態そのものを阻止することにより疾患の進行抑制を目的としています。またタファミジスは、より患者数の多い老人性全身性アミロイドーシス(野生型TTRアミロイド沈着による孤発性アミロイドーシス)に対する有効性も期待されています。

健康診断・血液検査MAP