ドーピング検査に血液検査(EPO検査)を導入
国際競技大会でスポーツ選手に対するドーピング検査は、原則として尿を検査材料として行われてきました。これは、国や宗教により採血行為に抵抗があったためです。しかし、近頃では持久力の増強を期待してEPO(エリスロポエチン)をドーピング薬物として使用する例が増えてきました。
このため、ペプチドホルモンの検査をより高感度かつ厳密に行って選手の健康被害を未然に防ぐため、尿に加えて血液検査も実施されるようになりました。新たな検査が追加され、ドーピング検査は一層厳重に行われることになりました。
EPO(エリスロポエチン:Erythropoietine)はアミノ酸165個と複数の糖鎖からなる分子量約34,000の糖蛋白ホルモンで、骨髄における赤血球の生産を促進して酸素供給能力を高める作用があります。EPOは各種貧血時や低酸素環境にいると、腎臓で多量に分泌されます。近年、哺乳類の遺伝子組換え細胞を用いてEPO製剤(rhEPO)が開発され腎性貧血治療薬として一般に流通しています。
・血液ドーピング検査(EPO検査)の内容
1)スクリーニング:採血により得た血液を検査材料として、以下の検査を実施します。
・ヘモグロビン(Hb) :酸素の運搬を担う赤血球ヘモグロビンの血中濃度を測定。
・ヘマトクリット(Ht):血液中に占める赤血球の割合(%)を測定。
・網状赤血球数(Ret) :赤血球の中で最も若いもので、数量を測定することにより骨髄での赤血球の生産状態を知ることができます。
・必要に応じてトランスフェリンレセプター(s-TFR)を測定 :鉄を運搬する血漿蛋白であるトランスフェリンと結合する受容体です。EPO投与を反映して上昇するため、効果的なEPOドーピング検査の指標です。
2)確認検査
スクリーニングでEPOドーピングが疑われた場合は、尿を検査材料としてEPO製剤(rhEPO)の検出を行います。
電気泳動の画像データを数値化することで正確な評価ができます。