ADAMTS−13 VWF切断酵素
ADAMTS-13は、血小板血栓の発症にかかわる物質として2001年11月に発見された、フォンウィルブランド因子(von Willebrand factor:VWF)切断酵素です。
ADAMTS-13の血漿中濃度は約1μg/mlで、その血中半減期は2〜3日です。おもな産生臓器は、肝臓のとくに星細胞とされています。
ADAMTS-13の測定は、従来SDSアガロース電気泳動法による活性測定が行われていましたが、時間および手間がかかる手法であるため、臨床レベルでの普及には至っていませんでした。最近では、ADAMTS-13の抗原量を測定できるモノクローナル抗体サンドイッチELISA法ならびにポリクローナル抗体によるサンドイッチELISA法が確立されています。
血中にはVWFと呼ばれる血漿糖蛋白質が存在します。VWFは血管壁の損傷によって露出したコラーゲンや、血小板表面の受容体蛋白質に結合することによって、血小板を凝集させる働きを持ちます。通常、VWFはVWF切断酵素:ADAMTS-13により部分的に切断されることにより、正常な止血機能が維持されています。
ADAMTS-13活性の低下は先天的にはADAMTS-13遺伝子の変異、後天的にはADAMTS-13に対する自己抗体により引き起こされ、超高分子VWFが血中に蓄積され、微小血管における血小板の過剰な凝集を引き起こします。
通常VWFは分子量20,000kDa以上の巨大分子として血管内皮より血中へ分泌され、そこでメタロプロテアーゼであるADAMTS-13(VWF分解酵素)により切断され、500〜20,000kDaのマルチマーとして血中を循環しています。
血管が傷つくと、血流中の血小板が傷口に集まってきて、VWFマルチマーとともに凝集塊(血小板血栓)を形成します。この血小板血栓をさらに強固なものにするため、凝固因子が活性化され、最後にフィブリノーゲンがフィブリンに変化し安定な血栓ができ、血管の修復が行われます。
一方、疾患時(閉塞などにより高ずり応力が生じた場合)においては、VWFの立体構造の変化が起き伸展した構造をとります。このようなVWFはADAMTS-13による分解を受けにくく、通常認められないような巨大VWF分子が過剰に血中に存在し、血小板とより効果的に結合することにより、血管内で血小板の凝集を促進し、微小循環に血栓を形成すると考えられています。
低値を示す病態
血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura:TTP)