尿中糖定性
尿中に排出される糖の大部分はグルコースであり、まれにフルクト
ース、ガラクトース、ラクトース、ペントース、サッカロースなど
がみられることもあります。
尿糖は糖質代謝異常によって血糖値が健常域を逸脱して上昇した場
合(糖尿病など)、または血糖値の上昇がなくても腎臓の糖排出閾
値が低下した場合(腎性糖尿)に起こり、原因によって区別されます。
健常者の尿糖排泄閾値は血糖値で160〜180mg/dl程度である。一般
的には血糖値がもっとも低い早朝空腹時に採取した尿で、糖が陽性
ならば異常とし、逆に血糖値がもっとも高い食後2時間ごろの尿で
陰性であれば正常と考えることができます。
尿糖定性に用いられる酵素法は、アスコルビン酸(ビタミンC)や
L-ドーパによって反応を抑制され偽陰性を呈することがあるので注
意を要します。
高値を示す病態
1)正常血糖性糖尿(腎性糖尿)
腎尿細管におけるブドウ糖の再吸収機能が低下し、腎の糖排出閾
値が下がるために起こる。先天性にみられる病態として腎性糖尿
Fanconi症候群・Wilson病・ガラクトース血症など。後天性では
慢性カドミウム中毒・イタイイタイ病などの多発性近位尿細管障
害の一徴候として認められる。
2)正常血糖性糖尿(食餌性糖尿)
一時に大量の糖分(200g以上)を摂取したあとにみられる。胃切
除を受けた患者に多くみられ、ダンピング症候群を伴う場合が多
い。
3)高血糖性糖尿(糖尿病)
インスリンの分泌または作用が減弱し過血糖になり尿中にグルコ
ースが排出されるもの。
4)高血糖性糖尿(内分泌性疾患)
膵以外の内分泌臓器(甲状腺・下垂体・副腎など)の機能亢進で
高血糖となり、尿糖陽性となるもの。
5)高血糖性糖尿(神経性糖尿)
ストレス・精神的緊張などの際にみられることがある。
6)高血糖性糖尿(その他)
重症な肝疾患・ステロイド服用時・脳腫瘍・薬物中毒などの一部
でもみられるが、いずれも一過性。