尿中ウロビリノーゲン定性
尿中へのウロビリノーゲンの排泄は、その一連の生成過程である
1. 赤血球の崩壊によるヘモグロビンをもとにした間接型ビリル
ビンの産生
2. 肝における直接型ビリルビンへの代謝
3. 胆道から腸管へのビリルビンの排出
4. 腸内細菌によるビリルビンからウロビリノーゲンへの代謝
5. 腸管からのウロビリノーゲン吸収
6. 門脈血からウロビリノーゲンの肝細胞への取り込み
7. 腎からウロビリノーゲンの排泄
などの諸因子に影響されます。
直接型ビリルビンが腸に達すると、腸内細菌により脱抱合、還元さ
れてウロビリノーゲンとなります。ウロビリノーゲンの2割程度は
腸管から再吸収されて、肝にもどり大部分は再びビリルビンとなり
ますが、その一部は大循環にも出て腎より尿中に排泄されます(腸
肝循環)。
胆道閉塞がある場合は、ビリルビンが腸に排泄されないため、ウロ
ビリノーゲンは生成されず、尿中ウロビリノーゲンは低下します。
肝実質障害時には胆汁中へ排泄されなかった多量のウロビリノーゲ
ンが大循環中にたまり、尿中ウロビリノーゲンが増加します。
赤血球破壊亢進のあるときにはビリルビン生成が増加するため尿中
ウロビリノーゲンも増量します。
従来、主として尿中ウロビリノーゲン排泄の増加は、肝細胞障害の
指標として用いられてきましたが、その判定は、溶血、腸内細菌な
ど他の影響をも考慮することが必要です。
検査方法:試験紙法
基準値:(±)
陽性を示す病態
・ウロビリノーゲン処理能の低下(肝疾患、心不全など)
・赤血球破壊機転の亢進によるビリルビンの過剰生成、体内出血巣
の存在(脳出血・子宮外妊娠破裂など)、溶血性貧血(紫斑病・
マラリア・溶血性黄疸・発作性夜間血色素尿症など)
・腸管からのウロビリノーゲン吸収増加(便秘)
・腎尿細管からの再吸収増加(アルカリ尿)
陰性を示す病態
・胆道閉塞
・黄疸極期、重症肝疾患(ビリルビンの肝細胞処理が障害された場
合)
・高度腎機能障害(ウロビリノーゲンの排泄障害)
・新生児(腸内細菌の欠如)、抗生物質投与(腸内細菌の抑制)、
下痢
※遮光保存しないとウロビリノーゲンは分解され陰性となることが
ある。