妊娠に伴う検査値の変化 血液凝固・線溶系の変化
妊娠 により血液凝固は亢進し、線溶は抑制されます。分娩時の出血を減少させるための合目的的な変化といえます。
1)血液凝固亢進
血液凝固系はほぼ全般的に亢進し、血液凝固因子では第XI、XIII因子以外は増加します。抗凝固因子であるプロテインSは減少し、妊娠末期には非妊娠時の約30%まで活性値が低下します。プロテインCやアンチトロンビンIII(AT-III)は妊娠により値は変化しません。フィブリノーゲン(第I因子)は徐々に増加し、妊娠末期には非妊娠時の約1.7倍になるため、炎症の指標とされる赤血球沈降速度(ESR)が増加します。よって妊娠時における赤沈の亢進は炎症の診断には不適当です。妊婦における赤沈測定の臨床的意義は、産科DICの診断です。
2)線溶抑制
線溶促進因子であるtPA(組織型プラスミノーゲンアクチベーター)やuPA(ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター)、線溶抑制因子であるType1およびType2のプラスミノーゲンアクチベーターインヒビターはともに妊娠により増加します。しかし線溶抑制物質の増加がより著明なため、全体として線溶は抑制されます。