加齢に伴う血液の変遷 凝固線溶・抗凝固線溶系の変化 - 凝固線溶・抗凝固線溶系の因子が成人のレベルに達するまでの期間は、おおむね生後6ヶ月から1歳です。

加齢に伴う血液の変遷 凝固線溶・抗凝固線溶系の変化

血液の流動性を維持する仕組み(抗凝固機構)、血管破綻部位で止血血栓を形成する仕組み(凝固機構)、一度できた血栓を血管壁の修復に合わせて取り除く仕組み(線溶・抗線溶機構)の機能を果たすうえで必要な因子(蛋白質)のほとんどは肝臓で産生されます。
肝臓の蛋白産生能力は在胎期間とともに発達していくので、在胎期間の短い早産児ほど凝固機能・抗凝固機能・繊維素(フィブリン)溶解能が低くなります。結果として、娩出時や出生後に血管が破綻したとき、出血が止まりにくいだけでなく、感染・末梢循環不全・低酸素血症などで血液が過凝固状態になったとき、これを修正して血流を維持する力が弱く、このことが新生児に播種性血管内凝固障害が多い理由となっています。

乳児期の血液凝固系のもう1つの特徴はビタミンKの欠乏による出血がみられることです。すなわち血液凝固因子の中でプロトロンビン・第VII因子・第IX因子・第X因子はビタミンKがないと完成しないため、これらの凝固因子が欠乏して止血困難が起こります。ビタミンKの欠乏は早期新生児期と生後1ヶ月前後にみられ、それぞれ新生児ビタミンK欠乏性出血症、乳児ビタミンK欠乏性出血症と呼ばれていますが、後者はほとんど母乳栄養児に限って発症し、高率に頭蓋内出血起す予後不良の疾患です。いずれもビタミンK製剤の予防投与で発症を回避することが可能です。
この時期に限ってビタミンKを投与しないと欠乏が起こる理由として、
1)ビタミンKは胎盤移行が少なく出生時の備蓄が少ない。
2)母乳中のビタミンK含量が少ない。
3)ビタミンKの利用能力が低い。
4)ビタミンKの吸収が悪い。
5)腸内細菌由来の内因性ビタミンKの供給が少ない。
など様々な要因が複合的にかかわっています。

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