妊娠 に伴う検査値の変化 糖・脂質・Na代謝の変化
妊娠 に伴う検査値の変化で、血糖については空腹時の軽度低血糖、食後の高血糖と高インスリン血症が特徴的です。脂質では、生理的に血清中性脂肪やコレステロールが高値となります。Na代謝は、Na貯留に比べ水貯留傾向が強いため、血清Na値は3〜4mmol/l程度減少します。
1)糖代謝
空腹時の軽度低血糖、食後の高血糖と高インスリン血症が特徴的な変化です。これらの変化は、胎盤で産生されるエストロゲン、プロゲステロン、hPLなどがインスリン抵抗性増大に働くために生じると考えられています。これら胎盤由来の因子は胎盤発育につれ産生が増加するので、妊娠が進むにつれインスリン抵抗性は増大することになります。母体で利用されにくくなり増加したブドウ糖は、胎盤を介して胎児に供給され栄養源となります。しかしこのような妊娠によるインスリン抵抗性の増加は、妊娠糖尿病の発症の背景となり、糖尿病合併妊娠では血糖コントロールの憎悪につながります。
2)脂質代謝
胎児発育に必要な栄養素は、胎盤を通過しやすい形のもので、ブドウ糖やアミノ酸が相当します。一方で母体は自分自身のエネルギー源として、中性脂肪の分解産物である遊離脂肪酸やグリセロールなどの脂質を利用するように代謝系が変化します。コレステロールは胎盤で大量に産生されるステロイドホルモンの基質となります。このため妊婦では生理的に血清中性脂肪やコレステロールが高値となります。総コレステーロールは非妊娠時の2倍になることもあります。このような妊娠に伴う高脂血症は、分娩後の授乳開始とともに比較的速やかに低下するので授乳に備えて妊娠中に脂質をプールしているとも解釈できます。
3)水・ナトリウム代謝
妊娠末期までに6.5〜8.5Lの水貯留を生じ、体重は妊娠末期までに約7〜12kg増加しますが、大半は水分量の増加です。また妊娠により約900mEqのNa貯留を生じますが、Na貯留に比べ水貯留傾向が強いため、血清Na値は3〜4mmol/l程度減少します。