デング熱 蚊で媒介されるデングウイルス感染症
デング熱 は、ネッタイシマカなどの蚊によって媒介されるデングウイルスの感染症です。デングウイルスはフラビウイルス科に属し、4種の血清型が存在し比較的軽症の デング熱 と、重症型の デング出血熱 とがあります。
デングウイルスは、日本脳炎ウイルスと同じフラビウイルス科に属するウイルスで、やはり蚊(ネッタイシマカAedes aegypti、ヒトスジシマカAedes albopictus)によって媒介されます。4種の血清型(1型、2型、3型、4型)に分類され、たとえば1型にかかった場合、1型に対しては終生免疫となりますが、他の血清型に対する交叉防御免疫は数ヶ月で消失し、その後は他の型に感染する可能性があります。この二度目の感染時に、重症化する確率が高くなるといわれています。
デングウイルスに感染した場合、かなりの割合で不顕性感染に終わると考えられています。実際には感染者のどのぐらいの率が不顕性感染として終わるかという点は報告によりさまざまですが、約50〜80%が不顕性感染であると考えられています。
1)デング熱(DF)
患者の大多数はデング熱と呼ばれる一過性熱性疾患の症状を呈します。
感染3〜7日後、突然の発熱で始まり、頭痛特に眼窩痛・筋肉痛・関節痛を伴うことが多く、食欲不振、腹痛、便秘を伴うこともあります。発熱のパターンは二峰性になることが多く、発症後3〜4日後より胸部・体幹から始まる発疹が出現し、四肢・顔面へ広がります。これらの症状は1週間程度で消失し、通常後遺症なく回復します。
2)デング出血熱(DHF)
デングウイルス感染後、デング熱とほぼ同様に発症し経過した患者の一部において突然、血漿漏出と出血傾向がおこるとデング出血熱となります。重篤な症状は、発熱が終わり平熱に戻りかけたときに起こることが特徴的です。
患者は不安・興奮状態となり、発汗がみられ、四肢は冷たくなえい、極めて高率に胸水や腹水がみられます。また、肝臓の腫脹、補体の活性化、血小板減少、血液凝固時間延長がみられ、細かい点状出血が多くの例でみられます。さらに出血熱の名が示すように、10〜20%の例で鼻出血・消化管出血等がみられますが、症状の主体は血漿漏出であるため血漿漏出がさらに進行すると、循環血液量の不足からhypovolemic shock になることがあり症状の重症度によりGrade1〜4の4段階に分けられ、ショック症状を示すGrade3、4はデングショック症候群と呼ばれることもあります。