カルプロテクチン 潰瘍性大腸炎の病態把握
カルプロテクチンは、主に好中球や単球から分泌されるカルシウム結合タンパク質であり、炎症が生じている腸上皮では好中球がカルプロテクチンを放出していることが知られています。比較的安定であり、便中のカルプロテクチン濃度と腸管内の炎症の程度とが相関することから、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)の診断マーカーとなります。
測定方法:ELISA法モノクローナル抗体を用いたサンドイッチ酵素免疫測定法
検査材料:便
基準値:カットオフ値240μg/g
糞便中のカルプロテクチンが陰性であった場合、潰瘍性大腸炎が寛解であると判定する補助となります。
潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜に慢性の炎症や潰瘍が発生する原因不明の疾患であり、頻回な下痢と腹痛を伴います。国の難病に指定されており、根本的治療法は確立されていません。そのため患者は内科的治療で症状を緩和しつつ長期間の治療、検査を続けなければならず、外科的治療が必要な場合もあります。
現在の日本の医療現場では、潰瘍性大腸炎の診断や経過観察においては、都度の内視鏡検査が必須となっています。重症度の判断は、問診や内視鏡を用いてのスコアで判定されますが、内視鏡検査には半日程度の時間を要し、体内にスコープを挿入することから患者の身体的、経済的負担も大きいものとなっています。このような状況で、患者の負担ができるだけ軽く、客観的な数値で結果の得られる潰瘍性大腸炎の検査方法として糞便中カルプロテクチンの測定が有用と考えられます。