神経特異エノラーゼ(NSE)
解糖系の酵素であるエノラーゼはα, β, γの3種類のサブユニット
の組合せから成る二量体構造をもつ。このうちαγおよびγγ型の
エノラーゼは主に神経細胞や軸索突起に存在するため、神経特異エ
ノラーゼ(neuron specific γ- enolase :NSE)と呼ばれています。
近年、NSEは各臓器に分布する神経内分泌細胞にも存在することが
明らかとなり、その腫瘍であるAPUDoma(*)やそれに類似した性
格を示す燕麦細胞型の肺小細胞癌、神経芽細胞腫で腫瘍細胞より血
中に逸脱・増加することから、その有用なマーカーとして臨床応用
されています。
NSE測定の検体として一般には血清が用いられますが、EDTA血漿を
検体とした場合、癌患者において有意に高値を示すとの報告があり
ます。その確かな理由は不明ながら、EDTAがNSEの抗原構造の安定
化に寄与しているのではないかとの推測もあり、さらなる検討が期
待されます。また神経芽細胞腫においては髄液中に増加します。
*APUDoma:amineprecursor uptake and decarboxylationを伴う細
胞に由来する腫瘍。神経外胚葉細胞に由来し、ACTH、MSH、ADH、カ
ルシトニン、VIPなどを産生します。
検査材料:血清
基準値:単位(pg/ml)10.0以下
測定方法:IRMA(ビーズ固相法)
高値を示す病態
肺小細胞癌、APUDoma、神経芽細胞腫、肺良性疾患、胃潰瘍