総酸性フォスファターゼ(ACP)
酸性フォスファターゼ(ACP)は、リン酸エステルを加水分解する酵素の中で至適pHが酸性側にある酵素の総称です。ACPは、前立腺で大量に合成されるため血中でのかなりの部分を前立腺酸性フォスファターゼ(PACPまたはPAP)が占めています。PAPは酒石酸により活性が阻害される特徴があります。
免疫活性を利用したPAPの直接測定としてRIA法やEIA法がある(PAPの項を参照)。
ACP、PAPともに前立腺癌のスクリーニングや経過観察に用いられることが多いのですが、前立腺肥大症の10〜20%程度に高値がみられ、急性前立腺炎や尿管閉塞でも高値を示すことがあります。また、前立腺触診や生検、尿道カテーテルの挿入などの機械的刺激により高値になるので注意を要します。なお、前立腺腫瘍そのもののマーカーとしては、PAPの方が感度、特異性の点で優れています。
最近では酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ(TRACP)が破骨細胞の機能を示すことから、臨床的には骨代謝異常疾患の診断などに応用されています。
なお、ACPやPAP(前立腺性酸性フォスファターゼ)は検体の放置ですみやかに失活するので、室温に置く時間は極力短くする必要があります。
検査材料:血清
測定方法:UV法
基準値:単位(IU/l/37℃) 14.3以下
高値を示す病態
前立腺癌、骨転移を伴う悪性腫瘍、前立腺肥大症、急性前立腺炎 尿閉 など
低値を示す病態
前立腺全摘術後(術後モニターには高感度PSAを用いる)