肥満とレプチン(Leptin) - レプチンは、遺伝性肥満動物の原因遺伝子産物として同定された脂肪組織特異的な分泌蛋白で、脂肪蓄積に比例してその分泌が増加します。

肥満とレプチン(Leptin)

レプチンは、遺伝性肥満動物の原因遺伝子産物として同定された脂肪組織特異的な分泌蛋白で、脂肪蓄積に比例してその分泌が増加します。
脂肪細胞から分泌されたレプチンは、視床下部弓状核に到達し、摂食抑制ニューロンであるPOMCを活性化し、メラノコルチン系を介して摂食抑制作用とエネルギー消費亢進作用を発揮します。
このような摂食抑制作用のみならず、交感神経の亢進作用を介した昇圧作用、レニン・アンジオテンシン系亢進作用などを有しています。

レプチン遺伝子の変異のためにレプチンが産生されないobマウスや、全身の脂肪組織が欠乏することによりレプチン欠乏のおこる全身性脂肪萎縮症のモデルマウスでは、重篤なインスリン抵抗性、糖尿病脂肪肝、高脂血症が発症します。また、これらのマウスへのレプチンを補充すると異常は改善されることがわかっています。

・多彩なレプチンの作用
A視床下部を介する作用
1)摂食抑制
2)エネルギー代謝亢進
3)交感神経活動亢進
4)血圧上昇
5)糖代謝亢進
6)脂質代謝亢進
7)内分泌調整(下垂体・性腺など)
B抹消組織に及ぼす作用
1)免疫機能調節
2)血管新生促進
3)血小板凝集促進

大部分の肥満者における血中レプチン濃度は痩身者のそれよりも高く、また肥満者にレプチン遺伝子領域の変異も殆ど認められない。そのため、病的肥満の成立はレプチン産生低下あるいは異常ではなく、生体内における何らかのレプチン作用抵抗性により多く起因するという説が有力です。
メタボリックシンドロームでは、いわゆる選択的レプチン抵抗性、つまりメラノコルチン系を介する摂食抑制作用とエネルギー消費亢進作用への抵抗性が存在し、レプチンの有する抗肥満作用が減弱している一方で、交感神経活動亢進を介した血管収縮作用や、腎でのナトリウム貯留作用が保持されている状態が続いていると考えられます。

検査材料:EDTA血漿
測定方法:RIA(二抗体法)
基準値:単位ng/ml M 0.9〜13.0 F 2.5〜21.8

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