冠動脈疾患のリスクファクター リポ蛋白の粒径計測法
リポ蛋白の粒径計測法は、非変性濃度勾配ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(gradient gel electrophoresi:GGE)、核磁気共鳴法(nuclear magnetic resonance:NMR)、ゲル濾過カラムを用いる高速液体クロマトグラフィー法(high-performance liquid chromatography:HPLC)、電子顕微鏡法(electron microscopy:EM)、動的光散乱法(dynamic light scattering:DLS)などがあります。
それぞれの方法には一長一短があるため、特徴を熟知して行う必要があります。
1)GGE法
ゲル塗布部サンプル血清を添加し、別のレーンに粒子既知のスタンダードを添加して電気泳動すると、粒子サイズの順に分離泳動されます。この方法をもとに、ポリアクリルアミドゲル(リポフォー)電気泳動法を用いて、sdLDLの出現を推定するという方法です。この方法で泳動されたLDLの距離を、泳動されたHDLの距離で割ることによりLDLの相対移動度(Rf)を算出し、その比率が0.400以上であればsdLDL優位と推定されます。GGEでは、ゲルによるリポ蛋白の荷電の影響を受ける可能性があるため、正しい粒径を得ることは難しいのですが、操作が簡便で検査室でも行いやすく、保険点数も得られることから広く普及しています。
2)DLS法
DLS法は以前からインクやエマルジョン、ラテックスビーズなどの微粒子の粒径計測に用いられてきた方法で、1mm〜数μmの範囲で計測が可能です。DLS法の原理は、ブラウン運動をしている粒子にレーザー光を照射すると、ブラウン運動の速度に依存した散乱光がゆらぎとして検出されます。このゆらぎは、粒径が小さいほど速くゆらぎ、大きいほどゆっくりとゆらぎます。ゆらぎの信号はランダムであり、ランダム現象を評価するために自己相関関数を用います。検出器からの信号に基づいて、この自己相関関数の減衰度合いを相関計やソフトウェアにより解析する事で、平均粒径・粒径分布を算出します。DLS法は、サンプルをセットしてから結果が得られるまで5分程度と短時間で測定が完了し、操作も自動なので極めて簡便な方法といえます。DLS法とGGE法との相関は良好です。DLS法の欠点は、混在する粒子、特に大型粒子の影響を強く受けることで、臨床応用で用いるには、何らかの簡便な前処理でLDL分画を分離することが必要となります。