リン脂質(PL)
リン脂質はリン酸基をもつ複合脂質であり、化学的にはグリセロ・
リン脂質と、スフィンゴ・リン酸の二つに分類されます。生体内の
主な成分は、前者に属するレシチン、リゾレシチンと後者のスフィ
ンゴミエリンの三つであり、血中・組織ともにレシチンが最も多く
含まれます。
リン脂質の大部分は、脂質と蛋白の複合体であるリポ蛋白の構成要
素として、血中での脂質の安定化と代謝に重要な役割を果たしてい
ます。また、LCAT(レシチンコレステロール・アシルトランスフェラーゼ)
の基質となりコレステロールエステルの生成に関与するほか、生体
膜の構成成分としての機能もあります。
血中リン脂質の値はほぼコレステロール値と同様の変動を示し、そ
の比もほぼ1:1です。肝での生合成と分解、胆汁中への排泄の障害
により大きな影響を受け、胆汁うっ滞をよく反映します。
肝硬変で血清リン脂質値が低下する症例では、一般的にすべての分
画成分が低下しますが、特にリゾレシチンの減少が顕著といわれま
す。また、閉塞性黄疸でリン脂質値の上昇する症例ではレシチンは
上昇するがリゾレシチンは低下します。
生理的日内変動は±15%の範囲内で、食事による有意な変動はあり
ません。また、妊娠が進むに従い高値になるといわれています。
検査材料:血清
基準値:単位(mg/dl)150〜280
測定方法:酵素法
高値を示す病態
肝疾患(肝内・肝外胆汁うっ滞)、甲状腺機能低下症、ネフロー
ゼ症候群、家族性高脂血症(Ua、Ub、V、W)、LCAT欠損症
低値を示す病態
肝疾患(劇症肝炎、非代償性肝硬変)、甲状腺機能亢進症、
Tangier病、栄養障害 など