抗ARS抗体 多発性筋炎・皮膚筋炎に特異的な自己抗体
多発性筋炎・皮膚筋炎(polymyositis/dermatomyositis:PM/DM)は、骨格筋を障害する自己免疫性の炎症性筋疾患です。小児から高齢者まで幅広い年齢層で発症し、症状は多彩で個人差があります。
PM/DMでは多様な特異的自己抗体が出現しますが、そのなかで最も高頻度にみられるのがアミノアシルtRNA合成酵素(Aminoacyl-tRNA Synthetase:ARS)に対する抗ARA抗体ですです。ARSは、生体内でtRNAにアミノ酸を転移する役割を担う酵素で、タンパク質を構成する20種類のアミノ酸それぞれに対し、対応するARSが1つずつ存在することが知られています。
PM/DM患者では、血清中にARSに対する自己抗体(抗ARS抗体)が存在することが知られています。抗ARS抗体にはJo-1抗体をはじめとして現在までに8種類の自己抗体が同定されており、これらが陽性の患者では、共通した臨床症状がみられ、{抗ARS抗体症候群」を呈します。その特徴として、極めて高い確率で間質性肺炎を併発し、治療反応性はステロイドが奏効するが再燃しやすいことが知られています。
抗ARS抗体検査は、Jo-1抗体に抗ARS抗体4種(抗PL-7抗体、抗PL-12抗体、抗EJ抗体、抗KS抗体)を加えた、合計5種類の抗ARS抗体を一括して検出します。一括での検出が可能なことから、従来の抗Jo-1抗体検査を上回る臨床的な感度を有しており、PM/DMの診断の補助における有用性が期待されます。
検査材料:血清
測定方法:ELISA
基準値:25.0未満 陰性
対象疾患:多発性筋炎・皮膚筋炎・間質性肺炎