ウェゲナー肉芽種症(WG)
ウェゲナー肉芽種症(Wegener's granuromatosis:WG)は上、下気道の壊死性肉芽種症、壊死性肉芽種性血管炎、壊死性半月体形成性腎炎を3主徴とした血管炎です。
ウェゲナー肉芽種症の患者には抗好中球細胞質抗体(ANCA)のうち、蛍光染色パターンで好中球の細胞質が顆粒状に染色される細胞質型C-ANCAのひとつであるプロテイナーゼ3(PR3)に対する抗体が特異的に検出され病気の発症や進行に深く関わってい
ると考えられています。
臨床的特徴
1)上気道の症状:膿性鼻漏・鼻出血・難聴・耳漏・視力低下・眼の充血・眼痛・眼球突出・咽喉頭痛・声がかれる等
2)肺症状:血痰・呼吸困難・肺浸潤など
3)腎症状:血尿・乏尿・浮腫など
4)その他の血管炎を思わせる症状:紫斑・多発性関節炎・多発性神経炎など
1)〜3)のすべての症状がそろう場合を全身性ウェゲナー肉芽種症、3)を除き1)2)のいずれか2つ以上の症状を示す場合を限局型ウェゲナー肉芽種症と呼びます。
関連自己抗体
・PR3-ANCA:ウェゲナー肉芽種症で特異的に検出
治療と予後
WGの治療指針(厚生省難治性血管炎分科会、1997年)を参考にステロイド薬とシクロフォスファミドの併用で治療を開始します。上気道症状の強い例には、スルファメトキサゾール (ST) 合剤を併用することもあります。症状が寛解してきたら、ステロイド薬か免疫抑制薬のいずれかを中止し、一剤による維持療法を続けます。再発した場合は、ステロイド薬、免疫抑制薬を寛解導入療法の量にもどします。
また、WGでは上気道、肺に二次感染症を起こしやすいので、細菌感染症対策を十分に行います。
早期に診断を下して上述の免疫抑制療法を徹底して行うと、完全に寛解する例もあります。あまり早く治療を中止すると、再発の頻度が高くなるため、長期間の経過観察が必要になります。この際に疾患活動性の指標としてPR-3 ANCAおよびCRPが参考となります。
進行例では免疫抑制療法の効果が乏しく、腎不全により血液透析を余儀なくされたり、慢性呼吸不全に陥る例が多いようです。死因は敗血症や肺感染症が多く、全身症状の寛解後に著明な鞍鼻や視力障害を後遺症として残す例もあります。