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インスリン抗体には、糖尿病治療を目的として投与されたインスリンに対して産生されるものと自己免疫機序により産生されるものとがあります。
インスリン投与中の糖尿病患者血中には高率にインスリン抗体が出現し、治療抵抗性の原因となることから、定期的なスクリーニングが重要です。また、インスリン投与の既往がないにもかかわらず血中に抗インスリン抗体の存在する病態としてインスリン自己免疫症候群が知られています。本症は低血糖を生ずる点で特徴的であり、糖尿病治療時に出現する外因性インスリンに対する抗体が低血糖を生じない事実と際立った対照を成しています。
一説には、インスリン自己免疫症候群に検出される抗体はいったん結合したインスリンを容易に遊離し、自発性低血糖を惹起するのではないかとの見解があります。しかしながら、双方の抗インスリン抗体におけるインスリン親和性の相違は必ずしも証明されているわけではなく、低血糖状態の発現機序についての結論は得られていません。
いずれにしても、血中に抗インスリン抗体が存在する場合、インスリンの免疫学的測定系に干渉するために 真のインスリン値の測定は困難となります。干渉の仕方は、インスリン測定系におけるB/F分離の様式によって異なり、固相法や二抗体法では見掛け上高値に、塩析法(PEG法)や吸着法(デキストラン炭末法)では低値となえいます。特に高インスリン血症の鑑別に当たっては、抗体の有無をチェックすることが肝要です。
検査材料:血清
測定方法:RIA
基準値:単位(%)125I-IRI結合率 10.0以下(空腹時負荷前)
高値を示す病態
インスリン治療による抗体産生時、インスリン自己免疫症候群
低値を示す病態 低値側の臨床的意義は少ない
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