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家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia:FH)は、LDL受容体およびその関連遺伝子変異による遺伝病であり、著明な高LDLコレステロール血症、アキレス腱肥厚をはじめとする黄色腫、若年性冠動脈疾患を特徴とする遺伝病です。FHは、冠動脈疾患のリスクが極めて高く、かつ200〜500人に1人の高頻度で認められるにもかかわらず見逃されている疾患です。
PCSK9遺伝子は、2003年に常染色体優性遺伝形式をとる高LDL-C血症家系の解析から同定され、本遺伝子の突然変異による機能獲得(働きすぎること)が高LDL-C血症の原因であることが報告されました。一方、機能喪失型変異を有する患者は低LDL-C血症を呈し、冠動脈疾患の発症リスクが低下することも明らかになりました。
PCSK9(プロ蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型)の生理学的作用は、LDL受容体の分解を促すことです。細胞表面に局在するLDL受容体はリガンドであるLDLと結合後、エンドサイトーシスによってエンドソームに運ばれ、酸性条件下LDLを離します。LDLはアミノ酸とコレステロールに分解される一方、LDL受容体は細胞表面に運ばれ、再びLDLと結合し細胞内に取り込みます。このLDL受容体の細胞正面へのリサイクルは約150回行われます。PCSK9は肝細胞では小胞体から分泌され、その触媒ドメインが細胞膜上でLDL受容体に結合し、細胞内に取り込まれます。PCSK9が結合したLDL受容体はリサイクリングされずにリソソームで分解されます。
すでにわが国でもPCSK9とLDL受容体の結合を阻害する抗PCSK9モノクローナル抗体が2種類(アリロクマブ、エボロクマブ)発売されています。そのLDL-C低下効果は強力で、それぞれの長期投薬効果と安全性を検討したODYSSEY LONG TERM試験、OSLER試験では、従来治療に追加投与することにより、それぞれLDL-C値をさらに60%低下させること、比較的安全性も高いことが報告されました。心血管イベント発症に及ぼす影響を評価するアウトカム研究も現在進行中です。
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