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LDLが酸化変性して生じた酸化LDLは、動脈硬化巣の形成と進展に密接にかかわっているという酸化LDL仮説が提唱されてから20年が経過し、今では酸化LDLが真の悪玉コレステロールとして一般的にも知られるようになってきました。
まず酸化LDLは、血管内皮細胞を傷害し、血液中の単球を内皮細胞に接着させ、内皮下への遊走とマクロファージへの分化をうながします。次に酸化LDLは、血管内皮下でマクロファージのスカベンジャーレセプターを介して際限なく取り込まれ、脂肪滴を過剰に蓄積した泡沫細胞を形成します。泡沫細胞が血管内皮下に集積して動脈硬化初期病変となり、さらに酸化LDLはマクロファージや血管平滑筋の増殖を促進し、動脈硬化を進展させプラークを形成します。
LDLの酸化過程
LDLは分子量約540kDaのアポ蛋白Bが一分子と、コレステロール、リン脂質、中性脂肪などの脂質から構成されています。LDLがスーパーオキシドやヒドロキシラジカルなど活性酸素種の作用を受けると、内因性抗酸化物質消失するとともに不飽和脂質の過酸化が進行し、脂肪酸の分解産物として各種アルデヒドやケトン類が生じます。これら反応性に富む分子はアポBを修飾することでLDLを変性させ酸化LDLとなります。
このように酸化LDLとは、LDLが酸化的変性を受けて生じる多種多様の物質の総称であり、不均一な粒子です。その中でLDLが酸化変性を受けたときに生じるアルデヒド類のうち、多量かつ構造が明確であるマロンジアデヒド(MDA)に着目し、MDAにより修飾を受けたLDLであるマロンジアルデヒド修飾LDL(MDA-LDL)が代表的な酸化LDLと考えられ測定対象として選択されました。
MDA-LDL測定の臨床的意義
血清MDA-LDLレベルは、冠動脈疾患患者や糖尿病患者で高値を示すなど、動脈硬化性疾患との関連について多くのデータが蓄積されてきました。とくに糖尿病患者は非糖尿病者に比べ、冠動脈疾患の発症頻度が高いことに加え、神経障害のために自覚症状が少ないまま無症候性心筋虚血に至り、重症化するケースがあります。したがって、糖尿病患者では、冠動脈疾患を早期かつ正確に診断して治療することは長期予後を改善させるうえでとくに重要であり、冠動脈疾患のリスクを把握できるマーカーが望まれてきました。最近糖尿病患者を対象とした時、MDA-LDLはステント治療後の再狭窄、および冠動脈イベント再発のリスクマーカーとなることが明らかにされました。
血清MDA-LDLが高値を示す疾患
・冠動脈イベント((冠動脈疾患死,または非致死性心筋梗塞)再発リスクが高い糖尿病患者
・PCI治療後の再狭窄リスクが高い糖尿病患者
・冠動脈狭窄
・糖尿病
・頚動脈内膜中膜複合肥厚度(IMT)高値
・高脂血症(高LDL-C、高TG、低HDL-C)
・LDLサイズが小さい
・CETP(コレステロール・エステル転送蛋白)完全欠損
・黄色プラークを認める
※黄色プラーク:血管内膜の動脈硬化による部分的な肥厚をプラークといい、このプラークが不安定狭心症や急性心筋梗塞の発症に大きく関与しています。血管内視鏡検査の結果、動脈硬化巣は色調により黄色と白色に分類されることが明らかになりました。黄色プラークは脂質コア(黄色)の上の繊維性被膜が薄い動脈硬化で、容易に破綻(ラプチャー)しやすいことが考えられます。とくに破綻(ラプチャー)しやすいプラークは、脂質コアが大きく繊維性被膜が薄いため、黄色が強くぎらぎらした高度黄色プラークとして観察されます。一方、白色プラークは繊維性被膜が厚いプラークか脂質成分の少ない繊維性のプラークと考えられ、破綻(ラプチャー)しにくい安定プラークと考えられます。
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