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アルツハイマー病(alzheimer's disease:AD)は、脳の萎縮によって知的機能が徐々に低下し、社会生活に支障を来す疾患で、認知症全体の約5〜7割を占めています。
また、ADは「老人斑の蓄積」と「神経原線維変化」という2つの脳病理変化を特徴とします。これらの正体が、アミロイドβ(Aβ)とタウという蛋白質であること(アミロイド・カスケード仮説)が80年代に突き止められ、両者を標的にした薬の開発が進められてきました。しかし、症状が出ている段階でAβを除去しても、認知機能の低下は食い止められないことが明らかとなり、近年は、症状が出る前の脳病理変化を評価する指標を確立するための大規模研究が進行しています。
現在、米国のNIH(米国立衛生研究所)や製薬企業が中心となり、Aβやタウなどのバイオマーカーによる評価法を探る大規模臨床観察研究ADNI(Alzheimer's disease neuroimaging initiative)が各国で進められています。
従来の認知機能検査に加え、MRIによる脳容積の測定、PETを用いた病態評価を行います。Aβの蓄積は薬剤11C-PIBを使ったアミロイドPETで、脳での糖代謝低下はFDG-PETで評価します。さらに脳脊髄液中のAβ42(アミノ酸残基が42個のAβ)やタウなども測定します。
さらに、軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)群のAD発症を予測する有用なバイオマーカーとして、脳脊髄液のAβ42の低下が最も敏感であることが分かりました。
脳脊髄液Aβ42の次に予測マーカーとして優れていたのは脳脊髄液タウ、さらにApoE遺伝子ε4アレル数の順です。ApoEε4は発症のリスクを高める感受性遺伝子で、この遺伝子を1つ持つと発症リスクが3倍高まるとされています。なお、日本では脳脊髄液やアミロイドPETの測定は保険適用外で、脳ドックなどの一部の施設で測定を行う所も出てきています。
近い将来、バイオマーカーによる早期診断が可能になり、無症候のうちから進行を阻止する治療薬が開発されれば、ADの発症そのものを阻止、あるいは遅らせることが可能になるかもしれません。
ポリフェノールにADの予防効果があるとの研究があります。赤ワインに含まれるミリセチン、カレー粉に含まれるクルクミンなどは、試験管内やADモデルマウスの実験で、Aβの凝集や沈着を阻止することが既に見いだしています。現在、ヒトでADに対する予防・治療効果があるかどうかを検証する臨床試験の準備が進められています。
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