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最近の脳画像研究では、近赤外線分光法(nearinfrared spectroscpy:NIRS)の原理を用いて脳の血液量変化を推定する手法が盛んに用いられるようになりました。一般に、脳機能は記憶・思考・意思決定など認知機能にかかわる神経活動と、気分や感情の障害にかかわる神経活動に分けることができます。
・NIRSの原理
波長700nmから950nmの近赤外線光は、生体組織中を比較的良く透過します。また、ヘモグロビンは酸素化状態に応じて近赤外線領域で吸収係数が変化するため、光強度変化を計測することにより、酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの濃度変化を算出できます。
一般に、ある脳部位の神経細胞が強く賦活すると、消費された酸素を補給するために血液が増加し、供給過剰な状態まで酸素化ヘモグロビン濃度が上昇することが知られています。このため、酸素化ヘモグロビンの濃度変化を調べることにより、局所的な脳活動の状態を推測することができます。
・NIRSの短所
脳表面の近赤外線が届く範囲しかそくていできない。光の届く正確な距離は不明ですが、頭皮から2cm程度の深さまでしか測定できないことが指摘されています。そのため、大脳辺縁系・海馬・視床・扁桃体・大脳基底核など脳深部の活動は計測できません。NIRSで測定できるのは頭皮に近い大脳新皮質だけです。
・NIRSの長所
非侵襲で安全性が高く、被験者に与える拘束が少ないことです。そのため、ストレス測定などの心理学的研究や小児を対象とした発達研究に適した脳画像装置といえます。またMRIやPETに比べると格段に安価な装置で、ランニングコストもかからないことから、比較的小さな病院でも診断に用いることができ、患者の経済的負担も少なくて済みます。
近年では、NIRSを用いた脳計測が頻繁に行われるようになり、なかでも認知症の診断と精神疾患の診断についての研究が進められています。
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