近赤外線分光法(NIRS)を用いた認知機能の診断

NIRSによる認知機能の診断は、単なるヘモグロビン濃度の増減だけでなく、その活動パターンからも推測できます。

スポンサードリンク

近赤外線分光法(NIRS)を用いた認知機能の診断

記憶・言語・思考・問題解決などの高次認知機能において中心的な役割を果たす脳部位は前頭葉の外側面です。前頭葉の外側面は、頭皮に近いためNIRSで測定しやすく、この部位の酸素化ヘモグロビン変化量を認知機能の生理指標として多くの研究者が用いています。
ワーキングメモリ課題(一時的な記憶)の反応時間と前頭葉のヘモグロビン濃度変化の相関を分析した結果、前頭葉のヘモグロビン濃度変化が高い(前頭葉がよく活動している)被験者ほど、素早く課題を遂行できることが報告されています。この研究はNIRSを用いた前頭葉活動の測定が、被験者の認知機能を知るうえで有効な生理指標となることを示しています。

このほかにも、高齢者がワーキングメモリ課題を行っているときの前頭葉の活動を調べたところ、運動後は前頭葉の活動が上昇することを示し、適度な有酸素運動をすることが高齢者の認知機能を高めることをNIRSの計測により明らかにしました。また、NIRSによる認知機能の診断法を薬理評価試験に応用する試みも行われており、抗ヒスタミン薬の一種が前頭葉の活動を大きく低下させることも報告されています。
NIRSによる認知機能の診断は、単なるヘモグロビン濃度の増減だけでなく、その活動パターンからも推測できます。例えば、前頭葉活動の半球非対称性に注目し、右半球優位な被験者ほどある種の認知課題(Go/NoGo課題・論理的推論課題など)の成績が良いこと、右半球優位の進んだ児童ほど空間的ワーキングメモリ課題の成績が良くなることが報告されています。こうした研究は、脳活動を高めるための薬剤開発や教育法の開発に寄与するものとして期待されています。

▽近赤外線分光法(NIRS)を用いた認知機能の診断 のキーワード

▽次の記事、前の記事

近赤外線分光法(NIRS)を用いた精神疾患の診断 | 近赤外線分光法(NIRS)を用いた脳機能の診断 長所と短所

スポンサードリンク

健康診断・血液検査MAP:新着記事

新規保険収載 デングウイルス抗原定性
デングウイルス抗原定性検査は、国立感染症研究所が作成した「デング熱・チクングニア熱の診療ガイドライン」に基づきデング熱を疑う患者が、当該患者の集中治療に対応できる保険医療機関に入院を要する場合に限り算定できます。
DIC播種性血管内凝固の新診断基準 日本血栓止血学会2014
日本血栓止血学会は、厚生労働省DIC診断基準を修正したDIC診断基準暫定案を発表しました。アルゴリズムで、DICを「造血障害型」「感染症型」ならびに「基本型」の3つの病型に分けています。
新規糖尿病治療薬SGLT2阻害薬の効果と副作用
新規糖尿病治療薬sodium glucose co-transpoter2(SGLT2)阻害薬はインスリン作用を介さずに腎尿細管を標的とした薬剤です。
メタボロミクスによる癌診断
メタボロミクスは、有機酸、アミノ酸、脂肪酸、糖などの多種多様な低分子量代謝産物(メタボローム)を対象とした研究です。
膵グルカゴン 完全長膵グルカゴンを特異的に測定
完全長の膵グルカゴンを特異的に測定する研究検査項目です。
IgGサブクラスIgG2
IgGサブクラスIgG2検査はIgG2欠損症の診断、及び免疫グロブリン製剤の投与時に必要な検査です。
後天性血友病 APTTクロスミキシング試験
後天性血友病インヒビターの存在を知る簡便な方法としてAPTTクロスミキシング試験があります。
血液検査で癌の早期発見ができる miRNA検査
たった1滴の血液から、13種類もの癌を早期に発見できる・・これまでの常識を覆す、画期的な検査方法がミクロRNA(miRNA)検査です。
認知症を予防する MCIスクリーニング検査とは
MCIスクリーニング検査 とは、軽度認知障害(MCI)の兆候を早期に発見できるバイオマーカーを使用した血液検査です。
LOXインデックス 脳梗塞・心筋梗塞の発症リスク予測
LOX-index(ロックス・インデックス)は、脳梗塞・心筋梗塞発症リスクを評価する最新の指標です。

Valid XHTML 1.0 Transitional Valid CSS! Lint