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記憶・言語・思考・問題解決などの高次認知機能において中心的な役割を果たす脳部位は前頭葉の外側面です。前頭葉の外側面は、頭皮に近いためNIRSで測定しやすく、この部位の酸素化ヘモグロビン変化量を認知機能の生理指標として多くの研究者が用いています。
ワーキングメモリ課題(一時的な記憶)の反応時間と前頭葉のヘモグロビン濃度変化の相関を分析した結果、前頭葉のヘモグロビン濃度変化が高い(前頭葉がよく活動している)被験者ほど、素早く課題を遂行できることが報告されています。この研究はNIRSを用いた前頭葉活動の測定が、被験者の認知機能を知るうえで有効な生理指標となることを示しています。
このほかにも、高齢者がワーキングメモリ課題を行っているときの前頭葉の活動を調べたところ、運動後は前頭葉の活動が上昇することを示し、適度な有酸素運動をすることが高齢者の認知機能を高めることをNIRSの計測により明らかにしました。また、NIRSによる認知機能の診断法を薬理評価試験に応用する試みも行われており、抗ヒスタミン薬の一種が前頭葉の活動を大きく低下させることも報告されています。
NIRSによる認知機能の診断は、単なるヘモグロビン濃度の増減だけでなく、その活動パターンからも推測できます。例えば、前頭葉活動の半球非対称性に注目し、右半球優位な被験者ほどある種の認知課題(Go/NoGo課題・論理的推論課題など)の成績が良いこと、右半球優位の進んだ児童ほど空間的ワーキングメモリ課題の成績が良くなることが報告されています。こうした研究は、脳活動を高めるための薬剤開発や教育法の開発に寄与するものとして期待されています。
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