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脳、脊髄には、毒物等から組織を防御するため、血液脳関門(Blood-Brain Barrier:BBB)と呼ばれる特殊なシステムが存在します。血管と神経組織からなるBBBは、ブドウ糖やアミノ酸など、脳神経系に必要なごく一部の成分を除いて通過できない構造になっています。アルブミンなどの蛋白質は、BBBを通過しませんが、脈絡叢の毛細血管を通じて、ごく一部が脳脊髄液に移行します。
健常成人髄液中の蛋白濃度は、10〜40mg/dLと血清の200分の一程度です。分画ではアルブミン57〜62%、プレアルブミン4.7〜7.7%、γグロブリン5.8〜9.6%と、γグロブリンの占める割合が血清に比べて低く、IgGの髄液中濃度は1〜4mg/dLで、血清中の0.1〜0.3%です。
一般に髄液中の蛋白が増加する病態には、1)髄液中への出血、2)BBBの破綻、3)髄腔内での免疫グロブリン産生、4)髄液のターンオーバー障害の4つが考えられます。
1)は脳血管障害などでみられますが、髄液の蛋白組成は血中の比率に近づき、アルブミンも免疫グロブリンも増加します。3)は多発性硬化症など、限られた疾患でのみ認められる病態で、リンパ球が髄液中に移行し中枢神経内でIgG合成が起こるため、IgG濃度が増加します。アルブミンは肝のみで合成されるため、髄液中アルブミンは脳脊髄液への移行で出現したものと考えられ、この現象を応用し中枢神経系内でのIgG合成を推定するのがIgGインデックスです。
・IgGインデックス算定式
IgGインデックス= (髄液IgG×血清アルブミン)/(血清IgG×髄液アルブミン)
検査材料:血清および髄液
測定方法:TIA/ネフェロメトリー法
基準値:0.73以下
多発性硬化症との鑑別が問題となるウイルス性髄膜炎では、髄液中蛋白濃度は上昇しますが、BBB破綻による血清蛋白の移行によるものが主体のため、IgGだけでなくアルブミンの上昇も認められます。このためIgGインデックスは、あまり上昇しません。
IgGインデックスは、多発性硬化症が強く疑われる症例において、オリゴクローナルバンドと共に、鑑別診断を進める上で有用な検査と考えられます。
増加を示す病態:多発性硬化症(MS)、脳炎など一部の炎症性中枢神経疾患
低下を示す病態:低値側での意義は少ない
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