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メラトニンは主に松果体で産生されるホルモンで、その産生量は体内時計にコントロールされて日内変動を呈し、夜間に高く、日中は低いという概日リズムを示します。また、夜間でも強い光照射により短時間で抑制されます。血中濃度は個人差が大きいのですが、個人では毎日ほぼ一定の日内変動パターンを繰り返します。血中濃度の変動リズムは深部体温の変動リズムとともに概日リズムの位相を反映する指標として用いられています。
メラトニンは眠気を引き起こすほか、末梢神経を拡張させて体温を低下させます。また、視交叉上核にあるメラトニン受容体を介して概日リズムの位相を変化させます。
メラトニンの血中濃度を測定する意義は、概日リズムの客観的指標が得られることにあります。そのため夜勤症候群・ジェットラグ症候群(時差ボケ)・睡眠覚醒リズム障害など概日リズム周期と昼夜リズムが一致しない疾患や、季節性感情障害など体内時計の異常がかかわっていると考えられる疾患の研究に使われてきましたが、日内変動および個人差が大きいために数時間ごとに採血する必要があること、および光の影響を避けるため被験者に薄暗い中で過ごしてもらう必要があることなど、作業が煩雑で被験者の負担も大きいため研究目的以外にはほとんど用いられなかったのが実情です。
メラトニンの産生パターンの異常を伴う疾患にSmith-Magenis症候群があります。これは染色体の一部(17p11.2)に欠損がある先天性多発奇形および精神遅滞を伴う一群で出生の1/25000の割合で発生します。行動上の問題の一つに睡眠障害があり、入眠困難や夜間の長時間にわたる中途覚醒、日中の過度の眠気、早朝覚醒などを伴い、介護する家族が連続した睡眠をとれないため疲労困憊することがあります。この症候群ではメラトニン産生リズムが昼夜逆転しており、睡眠障害発生の一因ではないかと考えられています。朝にβブロッカーを投与して日中のメラトニン分泌を抑え、夜にメラトニンを投与して血中濃度の変動パターンを正常に近づけると、睡眠が著明に改善するという報告があります。
メラトニンが日常診療で利用できる検査として問題点がクリアできれば、各個人の体内時計の特徴に合わせた個別化医療も可能になります。
基準値:メラトニンは個人差が大きいため最高値の基準値は特に定められていませんが、0〜200pg/mL程度とされています。
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