バソプレシンAVP・抗利尿ホルモンADH

バソプレシン(Arginine vasopressin:AVP)は抗利尿ホルモン(antidiuretic hormone:ADH)ともいわれ、視床下部で合成され下垂体後葉に蓄えられる下垂体後葉ホルモンです。

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バソプレシンAVP・抗利尿ホルモンADH

バソプレシン(Arginine vasopressin:AVP)は抗利尿ホルモン(antidiuretic hormone:ADH)ともいわれ、視床下部で合成され下垂体後葉に蓄えられる下垂体後葉ホルモンです。AVPは腎尿細管における水の再吸収を促進する機能を持ち、その分泌は血漿浸透圧と血液量、血圧などにより調節されています。特に血漿浸透圧はAVPの分泌刺激として重要であり、AVPの測定に際しては血漿浸透圧も同時に測定し、両者を併せて判定することが望ましいとされています。血漿浸透圧は次の計算式からも得ることができます。
血漿浸透圧=2×Na(mEq/l)+血糖値(mg/dl)/18+BUN(mg/dl)/2.8

AVPの測定に当たっては、血漿浸透圧の上昇、水制限、立位など多様な要因によって変動するので採血に際しては30分の安静臥床後に行うことが望ましい。臨床的には尿崩症における腎性か下垂体性かの鑑別やSIADHの診断に重要です。
SIADH(syndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormone)はAVP過剰分泌に基づく抗利尿作用により体内水分量が増加して血清Naが低下し、希釈性低Na血症呈する疾患です。通常、血清Naが低下し血漿浸透圧が低下すると、AVP分泌が抑制されて水利尿が亢進することによって体内水分量が減少し血清Naは正常に回復しますが、SIADHでは低ナトリウム血症および低浸透圧血症下でAVPが十分に抑制されず、不適切に分泌されているために低Na血症が持続します。SIADHの原因として、AVPを異所性に産生する肺小細胞癌などの悪性腫瘍、AVP分泌調節系の障害を生じやすい中枢神経疾患あるいは肺疾患、ビンクリスチンなどの薬物が知られています。

AVPの欠乏で発来する代表的疾患は中枢性尿崩症です。多飲、多尿をきたし、1日尿量は3〜15リットルにも達します。AVP分泌不全が疑われる場合は、高張食塩水負荷テストにより確定診断をします。
厚生労働省間脳下垂体機能障害会議では、5%高張食塩水負荷(0.05ml/kg/minで120分間点滴投与)時に、血清Naと血漿AVPがそれぞれ
1)144mEq/lで1.5pg/ml以下
2)146mEq/lで2.5pg/ml以下
3)148mEq/lで4pg/ml以下
4)150mEq/lで6pg/ml以下
の全てをみたす場合は完全中枢性尿崩症とし1)〜4)の一点でも満たさない場合を部分型中枢性尿崩症としています。中枢性尿崩症の原因は、約60%が脳腫瘍などの基礎疾患による持続性、約40%が特発性、約1%が家族性です。家族性中枢性尿崩症は通常、常染色体優性遺伝形式をとり、多くの遺伝子変異はAVP前駆体であるプレプロAVPのニューロフィジン領域をコードする部位での変異です。
腎性尿崩症は、腎におけるAVPの反応性欠如が原因で、血中AVPは代償性に高値になります。原因として先天性、リチウムなどの薬剤性、高Ca血症、低K血症などが知られています。
近年、血漿AVP濃度が低値であるにもかかわらずSIADHの臨床症状を呈する症例が報告され、その病態はV2受容体遺伝子の変異により、持続的にV2受容体が活性化されるためAVP分泌の程度にかかわらす、腎での水再吸収が亢進して水利尿不全を生じ低Na血症を呈すると考えられ、nephrogenic syndrome of inappropriate antidiuresis(NSIAD)と命名されました。

検査材料:EDTA血漿
測定方法:RIA(二抗体法)
基準値:単位pg/ml 負荷前 0.3〜4.2 水制限(16時間)負荷前の2〜3 倍以上
測定に影響を及ぼす薬剤
AVP分泌低下:エタノール、ジフェニルヒダントイン
AVP分泌亢進:ニコチン、クロフィブレート、クロルプロパミド、ビンクリスチン、カルバマゼピン、フェノチアジン、シクロフォスファミド、三環系抗うつ剤、SSRI

・高値を示す病態
ADH不適合分泌症候群(SIADH)、腎性尿崩症、異所性ADH産生腫瘍、高カルシウム血症、慢性腎不全

・低値を示す病態
尿崩症、心因性多飲症

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