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血漿蛋白質は無数の蛋白成分より構成され、その主なものはアルブミン、グロブリン、リポ蛋白などです。
これらの蛋白質は生体を維持する上でそれぞれ独特の役割を持っていますが、この構成比からさまざまな病態の把握を行うために蛋白分画検査を行います。
個々の蛋白測定に比べ、疾患特異性や感度は劣りますが、迅速、簡便かつ安価に血清蛋白全体の状況が把握できるという利点を持っています。このため日本臨床検査医学会の提案する「日常診療における基本的臨床検査」にも採用されています。
それぞれの分画に含まれるおもな蛋白を次に示すとおりです。実際は各分画で量的にもっとも多い蛋白1〜2種類の変動が大きく反映されます。たとえばα1分画では急性相反応物質であるα1アンチトリプシンが主体で、炎症性疾患で上昇します。
α2分画ではハプトグロビンが主体で、炎症で増加します。β分画ではリポ蛋白とトランスフェリンが主体で、前者は高脂血症で増加、後者は腎糸球体障害や慢性消耗性疾患で減少します。γ分画ではIgGがもっとも多く、炎症性疾患やM蛋白血症で増加します。
これらの動きは、電気泳動によって得られた分画像をデンシトメータで表した曲線のパターンで判別します。健常人の蛋白分画パターンは、アルブミンを左側に記載した場合、 それぞれの頂点がα1<α2<β<γとほぼ単調増加のパターンをとります。もしこの大小関係に破綻がみとめられれば、その分画に存在する蛋白(前述の代表的蛋白である場合が多い)に量的変動があったと推定されます。
なお、α1、α2などの名称は電気泳動を行った場合の泳動先を意味します。アルブミンに近い順、すなわち陽極の近くからα1、α2、β、γと名付けられています。
各分画成分に含まれるおもな蛋白質
・アルブミン分画:アルブミン(これより陽極側にはプレアルブミンが存在する)
・α1グロブリン分画:α1アンチトリプシン、α1酸性糖蛋白、HDLなど
・α2グロブリン分画:α2HS糖蛋白、α2マクログロブリン、ハプトグロビン、セルロプラスミンなど
・βグロブリン分画:C3、C4、トランスフェリン、βリポ蛋白、ヘモペキシンなど
・γグロブリン分画:免疫グロブリン(IgA、IgM、IgG、IgD、IgE)
これらの分画成分に含まれる蛋白質が疾患等により増減すると構成比が変化し、特有の泳動パターンを示します。なおM蛋白では特有のMピークが出現し、その同定には、免疫電気泳動が必要です。
検査材料:血清
測定方法:セルロースアセテート膜電気泳動法
基準値:各数値よりもパターンの図形から病態を推定する
分画成分名 百分率(%) 濃度(g/dl)
アルブミン位分画 62.0〜72.0 4.55〜5.72
α1グロブリン位分画 2.0〜3.0 0.14〜0.24
α2グロブリン位分画 5.0〜9.0 0.39〜0.68
βグロブリン位分画 7.0〜11.0 0.50〜0.80
γグロブリン位分画 11.0〜20.0 0.75〜1.54
A/G 1.60〜2.60
異常を示す病態
・急性炎症型:Alb↓、α1↑、α2↑
・慢性炎症型:Alb↓、α1↑、α2↑、β↓、γ↑
・急性肝障害型:Alb↓、α2↓、経過と共にγ↑(血清総蛋白量低下)
・慢性肝障害型:Alb↓、α2↓、γ↑(増加したγ分画がβに迫りβ-γ bridgingとなる。)
・蛋白不足型:Alb↓、α2↓、β↓、γ↓(血清総蛋白量低下)
・ネフローゼ型:Alb↓、α2↑、β↑、γ↓(血清総蛋白の著明な低下)
・M蛋白血症型:細く狭い蛋白帯(M peak)が主にγグロブリン領域に出現
・妊娠型:Alb↓、β↑(血清総蛋白量低下)
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