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亜鉛(Zn)は代表的な必須微量金属で、70種以上の酵素(金属酵素)の構成要素として生体のさまざまな代謝系の調節に関与しています。臨床的には血清亜鉛過剰の病態はまれで、血清亜鉛の低下をきたす病態の方がはるかに多く重要です。
亜鉛欠乏により成長発育障害、性腺機能不全、皮膚病変、味覚・嗅覚異常などの障害がおこります。欠乏症の診断には一般に血清亜鉛値が用いられます。
亜鉛欠乏症の原因には、吸収・排泄機構の障害によるものと摂取不足によるものがあります。
摂取不足は低亜鉛食(菜食主義者など)のような例を除けば医原性のものが多く、特に長期静脈栄養や経腸栄養に伴う亜鉛欠乏症が重視されています。一方、腸性肢端皮膚炎は先天性亜鉛欠乏症として知られ、腸管からの亜鉛吸収不良が原因です。
また透析患者の血清亜鉛は低値を示すことが多く、味覚・嗅覚異常や性欲減退を訴える例でより低値を示します。この原因には腸管からの亜鉛吸収不良が関与すると考えられており、亜鉛補充により改善されます。
検査材料:血清または尿
測定方法:原子吸光法
基準値:単位(μg/dl)64〜111(血清)64〜947(尿)
※基準値は朝食前の採血により得られたデータです。食物の摂取により血中濃度が低下するので、朝食前の採血が望ましい。
・高値を示す病態
血清:溶血性貧血、多血症、好酸球増加症
尿:多発性神経炎、肝硬変、糖尿病
・低値を示す病態
血清:Zn摂取不足(中心静脈栄養、経腸栄養時に起こり易い)、腸性肢端皮膚炎、重症肝障害(肝硬変、肝膿瘍、肝癌など)、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、Crohn病など)、貧血(悪性貧血、鉄欠乏性貧血、再生不良性貧血など)、糖尿病、腎疾患(糸球体腎炎、ネフローゼ症候群など)
尿:多発性筋炎、Parkinson病、重症筋無力症
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