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生体内の鉄の総量はおよそ3,000〜5,000mgであり、2/3が赤血球内のヘモグロビンとして存在し、1/3弱が鉄貯蔵蛋白であるフェリチン等と結合して主に肝などの臓器中に貯蔵されています。血清鉄は0.1%程度です。
鉄は血色素(ヘモグロビン:Hb)を形成する重要な元素であり、通常3価(Fe3+)の化合物として食物より摂取され、胃液中の塩酸により3価の鉄イオンとして遊離され血中に運ばれます。そのため無胃酸者や低胃酸者は吸収障害により鉄欠乏性貧血になりやすい。
男性は1日におよそ1mgの鉄を失いますが、女性は月経のために月に約20〜30mgの鉄を失います。このため鉄貯蔵量が減少しやすく、一般的に女性には貧血が多いといわれます。またスポーツマンでは発汗中に鉄分が失われる上、過度の体動で溶血が起こるため鉄欠乏状態に陥りやすくなります。
通常鉄代謝状態の把握には血清鉄やトランスフェリン、フェリチン、あるいは総鉄結合能(TIBC)などを同時に測定し病態を把握すします。一般にFe、TIBCと不飽和鉄結合能(UIBC)の間には、TIBC=Fe+UIBCの式が成り立ちます。
鉄欠乏性貧血では血清鉄が低下しますが、肝でのトランスフェリン合成は亢進しUIBC、TIBCともに高値となります。鉄飽和度は低く、フェリチンは低値をとります。また真性多血症では鉄が動員されるため、貯蔵鉄が減少し血清鉄は低値になります。
血清鉄が高値を示す場合として、再生不良性貧血では骨髄内赤芽球の減少により鉄の利用低下をおこすため、鉄過剰となりフェリチンは増加します。TIBCやトランスフェリンは正常かあるいはやや低下します。鉄芽球性貧血もほぼ同様です。鉄過剰症であるヘモクロマトーシスでは鉄貯蔵量の増加により血清鉄やフェリチン、鉄飽和度が著明な増加を示します。
なお血清鉄は朝高く、夕方に低下する日内変動があります。加齢変化もみられ高齢者では低くなる傾向があります。
測定方法:比色法
検査材料:血清
基準値:単位(μg/dl)M50〜200 F40〜180
・高値を示す病態:再生不良性貧血、巨赤芽球性貧血、鉄芽球性貧血、ヘモクロマトーシス、肝硬変 など
・低値を示す病態:腎性貧血の一部、慢性出血性貧血、糖尿病、鉄欠乏性貧血、PNHの一部、出血性貧血、甲状腺機能亢進症、感染症(急性・慢性)、悪性腫瘍、バンチ症候群、ネフローゼ症候群、膠原病、真性多血症 など
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