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糸球体上皮細胞、たこ足細胞(Podocyte、以下Podo)は特異な形態をとり、高度に機能が分化しており、非常に増殖しにくいなどの生物学的な特性を有しています。そのため種々の障害を受けると糸球体機能に影響を与え、糸球体硬化に関与することが明らかになっています。近年このPodo障害を評価し、治療に役立てる研究が進められており、尿中のPodoの数やPodoマーカーであるポドカリキシン(Podocalyxin:PCX)の定量によるPodo障害の評価が行われています。
その結果次のような臨床的有用性が明らかになりました。
1)糸球体疾患のスクリーニング
尿中にPodoが検出されればPodo障害の存在を意味し、血尿・蛋白尿症例の中から容易に糸球体疾患をスクリーニングできる。腎生検の適応決定の1つとしても有用。
2)糸球体障害の活動性の評価
糸球体疾患の中で、炎症性疾患の急性期で尿中Podoが出現する。
3)ネフローゼ症候群における鑑別診断
ステロイド剤抵抗性症例、FSGSで尿中Podoが出現する。
4)糸球体腎炎における管外性病変の予知
IgA腎症、紫斑病性腎炎、ループス腎炎など種々の糸球体腎炎で急性管外性病変と尿中Podoの関連性が認められている。
5)糸球体硬化進行のの予知
持続的なPodoの出現は管外病変の進行を予測する。
6)治療のマーカーとしての有用性
尿中Podoが多数出現している時期では糸球体病変はまだ活動性であると考えられるため、このこの期間はより強力な治療が必要となる。またPodoの出現が少なければ急性病変が存在する可能性は少なく治療法を変えていく必要がある。治療戦略をたてるうえで有用な補助診断となる。
7)糖尿病性腎症での早期診断
糖尿病性腎症でのPodoの減少の原因の1つとしてPodoの尿中への剥離脱落機序が考えられる。
尿中ポドカリキシンの定量では、糸球体疾患で増加している症例が多く、ネフローゼ症候群・ループス腎炎では高値を示す例が多くみられました。糸球体疾患の中でも高度蛋白尿を示す疾患や糸球体障害が高度であると判断される疾患で、尿中のポドカリキシンが多く排泄されています。
一方で糖尿病性腎症のように糸球体に急性炎症性病変が存在しないような疾患においても、尿中ポドカリキシンの増加が認められました。微量アルブミンが認められない早期の糖尿病症例でも高値を示しました。これらの結果は糖尿病患者の早期の腎症を診断するバイオマーカーとなる可能性があります。
※巣状分節性糸球体硬化症(Focal segmental glomerulosclerosis:FSGS)
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