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プロインスリンは、膵β細胞で合成される86アミノ酸からなるインスリンの前駆物質で、インスリン-A鎖・インスリン-B鎖およびCペプチドを含むプレホルモンとして合成されます。
合成されたほとんどのプロインスリンはβ細胞内にあるインスリン顆粒に貯蔵され、顆粒内でプロホルモン変換酵素(PC2、PC3)により65-66切断プロインスリンあるいは32-33切断プロインスリンを経て、インスリンA・B鎖とCペプチドに切断されます(調節性経路)。
インスリンとCペプチドはβ顆粒に蓄えられますが、ブドウ糖などの種々の分泌刺激を受け1:1のモル比で血中に放出されます。また、ごく一部のプロインスリンはインスリン顆粒に入らず、プロセッシングを受けずにIntact型プロインスリンとして持続的に血中に分泌されます(構成性経路)。
プロインスリンの代謝は、Cペプチドと同様におもに腎臓で代謝を受けるため、血中の半減期はインスリンに比べて2〜3倍長くなります。そのため、健常者の空腹時血中プロインスリンとインスリンのモル比は見かけ上1〜2:10と高値を示します。
血中プロインスリン測定の臨床的意義は、高プロインスリン血症を示す病態を検出することにあり、結果の評価としてはプロインスリン/インスリン比(P/I比)が用いられます。
プロインスリンが高値を示す疾患および病態
1)インスリンの需要が高まっている状態
2型糖尿病患者ではプロインスリンおよびP/I比も上昇。また、2型糖尿病治療群でも、インスリン分泌を促進させるスルホニル尿素剤(SU剤)治療群は、非薬物療法群に比べて有意にプロインスリンおよびP/I比が高値となります。これは、インスリン抵抗性または薬物による過剰なインスリン分泌促進により膵β細胞に負担がかかり、プロインスリンがプロセッシングされずに血中に分泌される結果、高プロインスリン血症になると考えられるからです。
2)血中に抗インスリン抗体が存在する場合
血中に抗インスリン抗体が存在する患者では、抗インスリン抗体がプロインスリンに結合することにより、血中の半減期が著しく延長・停滞し、高プロインスリン血症の原因となります。
3)インスリノーマ
インスリノーマは膵臓に生じるインスリン分泌内分泌腫瘍で、未成熟な分泌顆粒からの分泌の増加や、構成性経路を介したIntactプロインスリンの放出の増加などにより血中プロインスリンあるいはP/I比が増加します。
4)家族性高プロインスリン血症
インスリン遺伝子のミスセンス変異による家族性高プロインスリン血症は現在4種類の変異が報告されています。そのうち3種類は、A鎖とCペプチドとの連結部位(65)のアミノ酸が置換されているため、プロセッシングを受けられずに血中に32-33split型のプロインスリンが放出されます。もう1種類はB鎖の10位のアミノ酸が置換されているため、ゴルジ体よりインスリン顆粒への選別がなされず、構成性経路よりIntactプロインスリンとして直接血中に分泌されます。
5)プロインスリンの血中における代謝時間の延長
腎不全などでプロインスリンの代謝が低下すると、見かけ上血中のプロインスリンが上昇します。
プロセッシング:合成した核酸や糖・タンパク質などを処理して最終的な物質に変換する過程をいう
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