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尿中Ngal(neutrophil gelatinase-associated lipocalin)は重症の急性腎障害を超早期に診断することを可能とするバイオマーカーです。
Ngalは脂溶性リガンドのキャリア蛋白群であるリポカリンスーパファミリーに属します。リポカリンスーパファミリーの分子量は17〜43kDaとアルブミンの約半分であるため、血中の蛋白は糸球体でろ過され、大部分が近位尿細管メガリン(megalin)と呼ばれるスカベンジャー受容体によって再吸収されます。この性質を利用して尿中α1ミクログロブリンやレチノール結合蛋白が近位尿細管の再吸収障害の指標として使われています。L-FABPもファミリー分子の1つです。
Ngalの主要な作用の1つが感染防御であり、それに合うように、細菌由来のエンドトキシン(リポポリサッカライド)や炎症性サイトカインであるインターロイキン1βは、Ngalの最も強力な誘導刺激です。腎障害においては腎臓内の遠位ネフロンすなわちヘンレ上行脚および集合管においてNgal蛋白が産生されます。また腎障害時には血液中Ngal濃度、糸球体ろ過されるNgal量が増加し、近位尿細管へ再吸収・蓄積されるNgal量も増加しますが、これは近位尿細管で産生したものではないと考えられています。したがって、尿中Ngal濃度を上昇させる原因としては1)細菌感染や腎障害による血中Ngal濃度の上昇。2)近位尿細管の機能不全による再吸収低下。3)遠位ネフロンからの産生亢進の全てがありえます。障害時の尿中Ngal増加には、腎臓と腎外の両方で産生されたものが含まれることは腎移植実験により証明されています。
尿中Ngalは主に分子量25kDaの単量体として存在しますが、急性腎障害あるいは慢性腎障害では非還元条件下でのウエスタンブロットにより少量の二量体および三量体が検出されるようになります。末期腎不全患者では、このほかにMMP-9(IV型コラゲナーゼ)と結合したもの(125kDa)、あるいはpolymeric immmunoglobulin receptor)やミクログロブリンと結合したもの(250kDa以上)も尿中へ排泄されるようになりますが、大型複合体が血中で形成されるのか、尿中で形成されるのかはまだ不明です。いずれにしても尿中Ngalの主成分は単量体であり、化学発光法による測定結果とウエスタンブロットによる解析結果にほとんど差はみられません。
小児開心術の術後では、血清クレアチニンが前値の1.5倍に到達して急性腎障害を発症したと診断されるのに24〜72時間を要しますが、尿中および血中Ngalは手術終了2時間後の時点ですでに著増しており、数日後のクレアチニン上昇を正確に予測することができます。また、尿中Ngalは急性腎障害発症群では非発症群よりも有意に高値となります。脱水や腎前性腎不全では、尿中Ngalはあまり上昇しないことは急性腎障害を予測するうえでのNgalの長所と考えられます。慢性腎臓病においては、尿中Ngal高値の症例は腎予後不良です。
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