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ストレスを客観的、定量的に評価する方法は、精神科や心療内科をはじめとする臨床分野、公衆・労働衛生学などの基礎医学分野のほか、心理学や人間工学などの分野で求められています。そのための方法の一つとして、ストレスによって濃度が変化する体液中の物質の化学的計測法が確立されており、主にコルチゾールやカテコールアミンに代表されるストレスホルモンが測定の対象とされています。
クロモグラニンA(CgA)は、主に副腎髄質クロム親和性細胞をはじめとする神経内分泌細胞に存在し、カテコールアミンの貯蔵や分泌に関与する可溶性蛋白質です。また、ヒト唾液中には、CgAに特異的な配列を持ったペプチドに対する抗体と反応する蛋白が存在することが確認されています。それにより、唾液CgAが精神的ストレスに対して高感度かつ特異性が高い指標であることも確認されました。
実験結果によると、強い精神的ストレス(人前での発表・ストループテスト)ではコルチゾール、CgAともに有意な上昇が認められましたが、ストレス負荷に対する濃度上昇と負荷終了後の低下はCgAは速やかであったのに対しコルチゾールは鈍い反応を示しました。また、弱い精神的ストレス(コンピューター作業・高速道路運転)ではCgAは明らかな上昇が確認されたのに対しコルチゾールは全く上昇しませんでした。一方、強い肉体的ストレスでは、コルチゾールは運動後しばらくしてから緩やかな上昇傾向がみられましたが、CgAは運動に伴う明らかな濃度変化は認められませんでした。
これにより、唾液中CgAは、精神的ストレスについてはコルチゾールよりも感度が高く、肉体的ストレスにはほとんど反応しないという特徴をもつと考えられます。
※ストループテスト
「あか」「あお」「みどり」「きいろ」の4つの単語がそれぞれ意味する色と異なった色で表示され、被験者は表示された色を回答する作業。
たとえば、「あか」という語が緑色で表示されている場合には「みどり」と回答する。文字の意味に惑わされるため、回答を急がせることにより強い精神的ストレスを与えることが心理学の分野で知られている。
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