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加齢により腎皮質機能は低下します。腎血管機能を示す腎血漿流量
(renal piasma flow:RPF)は10歳ごとに10%ずつ減少し、20代で
600ml/minです。RPFは70代で300ml/min程度にまで減少します。
糸球体機能を示す糸球体濾過率(glomerular filtraion reio:GFR)
は30歳以降、1年に0.75〜1.0ml/min減少し、80歳以上では50ml/min
となります。これは細動脈硬化と糸球体数の減少(70代になると健
常な糸球体は半分以下になる)によります。
GFRの基準的な測定法はイヌリンクリアランスですが、臨床的に
は内因性クレアチニンクリアランス(creatinine clearance:Ccr)
で代用されます。
蓄尿の不備および尿量測定の誤差は腎クリアランス試験の誤差の主
要因です。このため、採尿を行わないで性別・体重・身長・年齢な
どと血清クレアチニン(CRE)からクレアチニンクリアランス(Ccr)
を推定する推算式は正確な蓄尿が困難な小児や高齢者では有用です。
国際的に広く用いられているCockcroftの式を日本人に適応した場
合には、30〜50歳では良好な結果が得られますが、高齢者ではクレ
アチニン排泄量が実際より低く推定されます。このため日本人のデ
ータを取り扱う場合には堀尾の式が優れています。
・Cockcroftの式
男性:Ccr=(140-age)×BW÷(72×CRE)
女性:Ccr=0.85×(140-age)×BW÷(72×CRE)
・堀尾の式
男性:Ccr=(33-0.065×age-0.493×BMI)×BW÷(14.4×CRE)
女性:Ccr=(21-0.030×age-0.216×BMI)×BW÷(14.4×CRE)
Ccr:クレアチニンクリアランス(ml/min)
CRE:血清クレアチニン(mg/dl)
BW:体重(kg)
BMI:肥満度(kg/u)
age:年齢(歳)
血清クレアチニン値は高齢者では加齢による筋肉量減少のため相対
的に産生減少となり上昇が抑制され、さらに残存糸球体の代償性肥
大により、一般成人の基準値上限程度に留まることが多いので、高
齢者の腎皮質機能は血清クレアチニン値では判断できず、血清クレ
アチニン値が正常であるから腎皮質機能は正常であるという単純な
図式は妥当ではありません。
血清尿素窒素(blood urea nitrogen:BUN)は加齢とともに増加傾
向を示します。BUNは腎皮質機能のほかに、蛋白摂取量・異化の
亢進・消化管出血などの腎前性要因や脱水などの腎血流量の変化に
影響されます(この場合BUN/CRE>20となる)。
高齢者の腎皮質機能の評価に血清CRE値が使用できないため、B
UNが増加している場合に、腎前性因子が否定できれば潜在性の腎
皮質機能低下を疑わせます。
腎髄質は主として水分調節機能にあたっていますが、尿濃縮能・希
釈能ともに加齢により低下しいずれも80代で20代の2/3になります。
高齢者では、体水分量(特に細胞内液量)の減少、腎機能低下によ
る水・Na保持能の低下、加齢・中枢神経疾患による口渇感覚の低
下などが要因となり脱水に陥りやすく、さらに脱水に陥っても自分
でそれを感知し補正する能力が低くなります。背景として、感染症
・脳血管障害・悪性腫瘍など水・電解質摂取が減少する病態や利尿
剤などの脱水をきたしやすい薬剤や嘔気・食欲不振をきたしやすい
薬剤の服用があります。総蛋白(TP)、ナトリウム(Na)、ヘマト
クリット(Ht)など一般成人で脱水の評価に用いられる指標は、高
齢者では背景に慢性の消耗性疾患が潜んでいることが多いため、脱
水前のデータとの比較が必要であり有用性が低くなります。
高齢者ではBUN/CREが25以上、尿酸(UA)7mg/dl以上など
が有用で、このような場合には2,000ml以上の水分欠乏が考えられ
ます。
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