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高齢者では日常生活の行動能力(activity of daily living:ADL)
の違いが臨床検査値に影響を及ぼし、個体差が大きくなる傾向があ
ります。一般成人の基準値より少し外れた値を直ちに病的な異常と
判断することはできません。高齢者では症状が定型的でないことも
多く、臨床検査値と自覚症状や重症度とは必ずしも相関しないこと
に注意が必要です。
1)検査値の変動幅が大きい
加齢とともに個体差が大きくなる傾向があります。各個人の長年の
生活歴、既往歴が異なっており、最終的にはADLに差が生じてくる
ためです。病的な異常なのか、加齢に伴う変化なのかの見極めが必
要になります。
2)複数の疾患に羅患していることで検査値が修飾される
1人の患者が複数の疾患に同時に羅患していることが多く、multiple
pathlogyと表現されます。そのために若年・成人の患者と同様の判
断基準で診断すると、思わぬ誤りをすることがあります。
3)疾患の症状や徴候が、非定型的となりやすい
疾患の症状や徴候が、定型的な場合ばかりではなく非定型的であっ
たり、重症度と一致しないことがあります。臨床症状や徴候から検
査の異常を類推することは極めて困難です。重篤な疾患がなくても
発熱や脱水、軽度の電解質異常で意識障害をきたしたり、感染症で
も発熱や炎症反応に乏しかったりします。
4)採血条件が変化しやすい
高齢者では、検査当日の食事や服薬の指示をしばしば忘れるため、
検体の採取条件が厳守されなかったり、蓄尿なども不可能あるいは
不完全なことがあり、極端な異常値を呈した場合には採取条件を再
確認する必要があります。
5)薬物の影響を受けやすい
なんらかの薬剤を常用していることが多く、消化管から吸収された
薬物の多くは蛋白質と結合して血中に存在しています。蛋白質と結
合していない遊離型の薬物が薬効を発揮します。
高齢者では一般的に血清蛋白が減少しているため遊離型が増加して
薬効が強くなる傾向があります。また、加齢に伴う細胞内水分量の
低下と相対的な体内脂肪分布の増加があり、脂溶性薬物では分布容
積が大きくなり、血中での半減期が延長して蓄積しやすくなります。
薬物の多くは腎臓から排泄され、脂溶性薬物も肝臓で代謝され水溶
性となり、腎臓から排泄されます。
高齢者では腎皮質機能低下により腎排泄が遅延し、薬物有害作用の
発生率は高くなります。薬物有害作用は多臓器に出現しやすく、重
症例が多いことが特徴で、高齢者入院患者の3〜6%は薬物が原因と
されています。
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