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重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome:SFTS)はブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類される新規ウイルス、SFTSウイルス(SFTSV)によるダニ媒介性ウイルス感染症です。
SFTSVは、3分節の1本鎖RNAを有するウイルスで、クリミア・コンゴ出血熱やリフトバレー熱、腎症候性出血熱やハンタウイルス肺症候群の原因ウイルスと同様にブニヤウイルス科に属しています。中国からの報告では、マダニ「フタトゲチマダニ(Haemophysalis longicornis )、オウシマダニ(Rhipicephalus microplus )」からウイルスが分離されており 、SFTSVの宿主はダニであると考えられています。また、ダニに咬まれることの多い哺乳動物からSFTSVに対する抗体が検出されていることから、これらの動物もSFTSVに感染するものと考えられます 。ヒトへの感染は、SFTSVを有するダニに咬まれることによりますが、他に患者血液や体液との直接接触による感染も報告されています 。またウイルス血症を伴う動物との接触による感染経路もあり得ます。
SFTSVに感染すると6日〜2週間の潜伏期を経て、発熱、消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)、頭痛、筋肉痛、神経症状(意識障害、けいれん、昏睡)、リンパ節腫脹、呼吸器症状(咳、咽頭痛)、出血症状(紫斑、下血)等の症状が出現し、致死率は10%を超えます。SFTSはダニ媒介性ウイルス感染症であることから、流行期はダニの活動が活発化する春から秋と考えられます。ダニは日本国内に広く分布しますが、詳細はこれからの研究を待たなくてはならなりません。
SFTSVに感染しないようにするには、ダニに咬まれないようにすることが重要です。草むらや藪など、ダニの生息する場所に入る場合には、長袖の服、長ズボン、足を完全に覆う靴を着用し、肌の露出を少なくすることが重要となります。
今回報告された患者は、2012年秋に発熱、嘔吐、下痢(黒色便)を訴え入院。血小板数が8.9万/mm3、白血球数が400/mm3と低下していたほか、AST、ALT、LDH、CKの高値、血液凝固系の異常、フェリチンの著明な上昇などを認め、全身状態が悪化して死亡。患者に明らかなダニ咬傷は認められなかったが、血液からSFTSウイルスが同定されたことなどからSFTSと診断されました。
厚生労働省健康局結核感染症課によると、SFTSは2009年に中国中央部(湖北省と河南省の山岳地域)で初めて存在が明らかになり、2011年に原因であるSFTSウイルスが特定され、中国ではこれまでに7省で患者が確認されています。今回、日本で確認されたSFTSウイルスは、中国で確認されたウイルスとは遺伝子の塩基配列が一部異なっており、以前から日本に存在していたとみられています。患者には海外渡航歴がないことから、SFTSウイルスを保有するダニが国内に存在し、国内で感染したと考えられています。
確定診断には、血液などからのSFTSVの分離・同定、RT-PCRによるSFTSV遺伝子検出、急性期及び回復期におけるSFTSVに対する血清IgG抗体価、中和抗体価の有意な上昇の確認が必要であり、現在国立感染症研究所ウイルス第一部で検査が可能です(保健所や地方衛生研究所を通じて依頼できる)。治療に関しては、リバビリン使用の報告がありますが、その有効性は確認されていません。基本的に対症療法となる有効なワクチンはありません。
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