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カンジダ属菌やアスペルギルス属菌を含む多種の病原真菌は、接合菌などのわずかな例外を除き、いずれも真菌細胞の主要な構成成分として線維状多糖β-Dグルカンを含有しています。β-Dグルカンは、酵母の出芽時または糸状菌菌糸の先端発育時に内因性グルカナーゼの作用によって細胞外へ遊離されるため、深在性真菌症の診断マーカーとして血中のβ-Dグルカンの測定が活用されています。臨床評価試験では、カンジダ症やアスペルギルス症のほか、トリコスポロン症やニューモシスチス感染症などほとんどの深在性真菌症において陽性化し、病態と良好に相関することが確認されています。
しかし、接合菌は細胞壁にβ-Dグルカンを保有しないため、接合菌感染症では測定値は上昇しません。また、クリプトコックスでは、細胞壁骨格成分にβ-Dグルカンが存在しますが、厚い莢膜多糖が影響するためか、血中の測定値はあまり上昇しないことが知られています。
接合菌には600以上の菌腫が存在し、自然界に広く生息しています。その中で、ヒトや動物に感染する病原菌腫はムコール目かエントモフトラ目に属し、中でもムコール科のRhizopus、Rhizomucor、MucorおよびAbsidiaのいずれかの属の菌腫が多いとされています。
接合菌症は一般に白血病や糖尿病などの易感染患者に好発する日和見感染型深在性真菌症の一つであり、電撃的に進行し、最も予後不良の真菌症とされています。
接合菌症のリスク因子として、アシドーシス型糖尿病、栄養失調、重度熱傷、白血病などの血液悪性腫瘍、多発外傷、免疫抑制療法、癌化学療法、ステロイド療法、デスフェリオキサミン投与、骨髄移植、臓器移植などがあります。また、ポリコナゾール投与を受けている患者のブレイクスルー感染症として発症しやすいことも報告されています。
一方で、測定結果に影響を及ぼし、擬陽性を生じる因子として次のものがあります。
1)セルロース素材の透析膜を用いた血液透析
2)血液製剤(アルブミン製剤・グロブリン製剤など)の使用
3)環境中のβ-Dグルカンによる汚染
4)β-Dグルカン製剤の使用
5)Alcaligenes faecalisによる菌血症症例
6)非特異的反応(溶血検体・高グロブリン血症など)の出現
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