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酸性フォスファターゼ(ACP)はリン酸エステルを加水分解する酵
素の中で至適pHが酸性側にある酵素の総称で、その分子量は約10万
です。ACPは前立腺で大量に合成されているため、男性においては
血中濃度のかなりの部分を前立腺酸性フォスファターゼ(prostatic
acid phosphatase:PAPまたはPACP)が占めています。前立腺酸性
フォスファターゼを測定するには一般にRIA法のような免疫学的測
定法と比色法(UV法)がありますが、本法は比色法(RIA法と区別
するため、便宜上こちらをPACPと呼称する)です。比色法で測定さ
れるのは活性値であり、免疫学的測定法(RIA法)では抗原量(蛋
白量)が測定されます。
PACPは酒石酸で活性が阻害されるため、その酵素活性はACPの総活
性と血清を酒石酸で処理した後の活性(非前立腺由来酸性フォスフ
ァターゼ活性)を測定し、前者から後者を減ずることにより求めら
れます(前立腺由来酸性フォスファターゼ活性値=総酸性フォスフ
ァターゼ−非前立腺由来酸性フォスファターゼ活性値)。
PACPでは生物学的酵素活性が測定されるため、検体の扱い方により
大きな影響を受けることがあり、特に溶血により検査値が変動する
ことがあるので採血に注意し、採血後は速やかに血清分離を行い凍
結で保存する。また前立腺の触診や生検、膀胱鏡検査、尿道カテー
テルの挿入などの機械的刺激によっても高値になるのでこれらの処
置を行った場合、処置後24時間以内に採血した検体での測定は避けます。
PACPは前立腺癌で高値になるためスクリーニングに用いられます。
しかし前立腺肥大などの良性疾患でも陽性になることがあり、また
早期癌での陽性率があまり高くないとの指摘もあり早期診断におけ
る有用性には限界があるといわれています。一方、治療前にPACPが
高値であった場合には治療後のモニタリングに用いられます。
ちなみに非前立腺由来酸性フォスファターゼである酒石酸抵抗性酸
性フォスファターゼは、破骨細胞の機能を表すことから臨床的に骨
代謝異常疾患の診断などに応用されています。
検査材料:血清
測定方法:UV法
基準値:単位(IU/l/37℃) 2.9以下
高値を示す病態
前立腺癌、骨転移を伴う悪性腫瘍、前立腺肥大症、急性前立腺炎
尿閉など
低値を示す病態 前立腺全摘術後
(術後モニターには高感度PSAを用いる)
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