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種々の身体疾患や脳器質性疾患によってうつ病やうつ状態が生じる
ことが知られています。
1)内分泌疾患
クッシング症候群、甲状腺機能低下症、副甲状腺機能亢進症、
アジソン病、無月経、乳汁分泌症候群、月経前不快気分障害など
2)脳気質性疾患
パーキンソン病、アルツハイマー病、脳出血、脳腫瘍、多発性硬
化症、頭部外傷、てんかん など
3)その他の身体疾患
糖尿病、慢性疲労症候群、癌、心筋梗塞、高血圧、SLE、
エイズ、胃十二指腸潰瘍、気管支喘息 など
これらの疾患では、精神症状の背後にある内分泌疾患などを見逃さ
ずに的確な診断をすることが重要であり、また身体疾患の治療にの
際にうつに対する十分な配慮が必要となります。最近では。うつ状
態になると免疫機能や自律神経・内分泌機能が低下して、感染症や
循環器疾患にもなりやすい状態を生じるという点が注目されていま
す。
・甲状腺機能低下症とうつ病
甲状腺機能が低下するとうつ状態を示します。甲状腺機能低下症の
なかで頻度の高い慢性甲状腺炎(橋本病)は8割が女性であり、年
齢分布のピークは50歳代で、更年期の年代と一致します。成人女
性の30人に1人の割合で存在するといわれています。本症はエネ
ルギーの低下した状態であるといえ、出現してくる症状はうつ病の
症状とよく似ています。すなわち、何をするにも億劫で無気力であ
り、食欲が落ち、皮膚が乾燥してかさかさし、髪や眉がうすくなり
物忘れが多いなどは更年期障害と間違えられられえやすい症状です。
・甲状腺機能亢進症とうつ病
甲状腺機能亢進症であるバセドウ病には、甲状腺肥大、動悸、眼症
状の他に精神症状があります。一般的に精神活動は亢進状態で、い
らいらして落ち着きがない・活動的で多弁になる・刺激に過敏で興
奮しやすいなど情緒不安定になります。しかし、まれにうつ状態に
なり、特に高齢者でその傾向は顕著です。
甲状腺機能亢進症とうつ病にはいくつかの共通点があり(体がだる
い・疲れやすい・やせる・動悸・不眠・いらいらなど)うつの症状
を示す際に甲状腺機能亢進症にも留意することが必要です。また、
治療にあたっては、一般の身体的治療の他に精神症状への対応など
心身両面からのフォローが必要です。
・更年期のうつ病
更年期の女性の心理社会的背景として
1)子どもの自律:役割の喪失感
2)夫婦だけの生活:夫婦間の問題の顕在化
3)近親者の介護・死:心身の疲労・喪失感
4)体力・容姿の変化:若さの喪失感・健康面での不安
などがあります。更年期の内分泌環境の変化は、情緒・感情に影響
を及ぼし、心理的ストレスは内分泌環境の変動に関与することが知
られています。
更年期の不安愁訴はうつ病の可能性も否定できません。更年期のう
つは、身体症状のみが表面にあらわれる仮面うつ病の病態を呈しや
すいので注意が必要です。
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