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うつ病とは、抑うつ気分が根底にあり、それに伴い意欲の減退や施
行の障害を起こし、さらに多彩な身体症状を呈する障害です。
具体的には興味・睡眠・食欲・性欲などの欲求が鈍る場合、注意の
持続・歪曲した考え方・希死念慮などの集中力・認知に障害が及ぶ
場合、あるいは自殺などの衝動性のコントロールが困難になる場合
に、結果として生活に支障をきたしてうつ病と診断されます。
近年、患者数が増加し、疫学調査によれば生涯有病率は10%を超
えており極めて頻度の高い疾患といえます。女性の生涯有病率は男
性の1.3〜2.7倍であり、うつ病は女性に多い疾患です。
うつ病を呈する前病性格として、メランコリー親和型性格(几帳面
・勤勉・誠実・円満な対人関係・強い義務感)や執着気質(仕事熱
心・凝り性・正直・熱中性)などがあげられています。このような
性格を持った人に、生活や環境の変化などのストレスが加わること
により、うつ病が発症しやすくなります。
・診断
うつ病エピソードの診断の要点
A)エピソードが2週間以上続くこと
B)典型的症状
1)抑うつ気分
2)興味や喜びの減退
3)易疲労性または活力減退
C)付加的症状
1)自信喪失、自己評価の低下
2)自責感、罪悪感
3)自殺念慮、自殺企図
4)思考力や集中力の低下
5)精神運動性の変化(焦燥や制止)
6)睡眠障害
7)食欲の変化
軽 症:Bの2項目以上とB、Cで4項目以上
中等症:Bの2項目以上とB、Cで6項目以上
重 症:Bの3項目とB、Cで8項目以上
・治療
うつ病の治療には薬物療法と精神療法が行われます。薬物療法とし
ては、中等症までのうつには、フルボキサミンやパロキセチンなど
の選択性セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が第一選択とし
て用いられます。SSRIは三環系・四環系抗うつ薬に比較して、
主作用はほぼ同等でかつ副作用がはるかに少ないことが特徴です。
重症例では、SSRIより三環系抗うつ薬のほうが有効です。三環
系抗うつ薬には、口渇・便秘・排尿障害・眼の調節障害など抗コリ
ン作用に基づく副作用がしばしば出現します。
精神療法としては、一般心理療法が行われます。これは、患者を無
批判に受容し、共感的に傾聴しながら発症と経過に関与している心
理的因子に気づかせ、患者の自我を支えながら健康維持が出来るよ
うに、行動修正を援助する心理療法です。
・うつ病とうつ状態を起こしやすい疾患
1)内分泌疾患
クッシング症候群、甲状腺機能低下症、副甲状腺機能亢進症、
アジソン病、無月経、乳汁分泌症候群、月経前不快気分障害など
2)脳気質性疾患
パーキンソン病、アルツハイマー病、脳出血、脳腫瘍、多発性硬
化症、頭部外傷、てんかん など
3)その他の身体疾患
糖尿病、慢性疲労症候群、癌、心筋梗塞、高血圧、SLE、
エイズ、胃十二指腸潰瘍、気管支喘息 など
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