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更年期障害を理解するためには、まず更年期について知る必要があ
ります。それには女性の一生における女性ホルモンの推移の概要も
最低限必要です。
1)女性ホルモンの推移
女性ホルモンには、卵巣からのエストロゲンであるエストロン(estrone
:E1)・エストラジオール(estoradiol:E2)と脳下垂体からの性腺刺激
ホルモンであるゴナドトロピンの黄体化ホルモン(luteinizing hormone
:LH)・卵胞刺激ホルモン(follicle stimulating hormone:FSH)の4種
類があります。
卵巣の機能の最大の指標であるエストロゲンの分泌量は、幼児期か
ら思春期に増加し、20歳代の前半にピークとなり、その後成熟期と
はいえ徐々に減少し、40歳を過ぎてから50歳半ばにかけ急激に
減少します。特に閉経してからは、卵巣からのエストロゲンの分泌
はなくなります。通常50歳半ばまでに卵巣からのエストロゲンの
分泌は全くなくなります。一方、脳下垂体からの卵巣を刺激するゴ
ナドトロピンの分泌量は、卵巣のホルモン分泌機能の低下に逆相
関して40歳を過ぎると上昇します。
2)閉経
世界保健機構(WHO)による閉経の定義は、「閉経とは卵巣にお
ける卵胞の消失による永久的な月経の停止」とされています。
胎生期の卵巣には卵胞が数百万個存在していますが、アポトーシス
により出生後急速に減少し、思春期以降も減り続けて閉経期ころに
は数百個レベルになり、やがて卵巣には、卵胞が見られなくなります。
実際には、40歳以上の女性で1年以上月経を認めなければ閉経と
します。日本産婦人科学会では、閉経年齢の中央値を50.5歳とし、
閉経の正常範囲を45〜56歳としています。
※アポトーシス (apoptosis) とは、多細胞生物の体を構成する細胞
の死に方の一種で、個体をより良い状態に保つために積極的に引
き起こされる、管理・調節された細胞の自殺のこと。
3)更年期の定義
国際産婦人科連盟(FIGO)では「更年期とは性的成熟状態から
卵巣機能が完全に消失するまでの期間」と定義しています。
・女性の一生の卵巣機能からみた区分
幼小児期:1〜7歳
思春期:8〜18歳
性成熟期:19〜41歳
更年期:42〜55歳
老年期:57歳〜
4)女性ホルモン欠乏症状
元来、女性性ステロイドホルモンは、泌尿・生殖器への作用が主で
すが、生殖器外作用として1)自律神経調整作用、2)精神心理安
定作用、3)骨・脂質などの代謝調節作用などがあります。
更年期には、特にエストロゲンの減少や欠乏がおこるので、これら
の泌尿・生殖器やそれ以外への生理作用が減弱することによって
様々な症状が現れます。
更年期に入りまず起こる症状は、月経状態が変化することです。し
たがって42歳を過ぎて月経の周期に今までと違いが出てくれば、
その人にとっての更年期が始まったと判断できます。
個人差はありますが、やがて自律神経失調症状、精神神経症状が
みられ、50歳の閉経を過ぎると泌尿・生殖器の萎縮症状、さらに数
年して心血管系疾患、骨そしょう症などが現れてきます。
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