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LDLコレステロール(LDL-C)は悪玉、HDLコレステロール(HDL-C)は善玉と呼ばれていますが、近年、構成蛋白の酸化や欠損などにより、機能に異常を来した酸化HDLや機能不全HDLといった悪玉HDLの存在が明らかになってきました。
HDLの主な機能は、泡沫細胞からコレステロールを引き抜いて肝臓に送る逆転送機能や抗酸化作用、抗炎症作用、抗血栓作用、内皮細胞の修復作用、内皮細胞のNO産生促進作用など、多くの作用があります。
この作用に期待し、HDLを増やす薬剤が開発されており、その一つが、コレステロール転送蛋白(CETP)阻害薬です。CETPは、HDLからLDLにコレステロールを輸送し量や質を調整する分子のことで、これを阻害すればLDLにコレステロールが輸送されず、HDL-C値が上昇すると考えられます。
CETP阻害薬の一つとして開発されたtorcetrapibは、12ヶ月間投与の結果、HDL-C値が狙い通り72.1%上昇しましたが、心血管イベントの発生率や総死亡率が有意に増加したことが判明し、開発は中止となっています。考えられる原因として、CETP阻害薬によって増えたHDLが機能不全HDLであった可能性があります。
CETPがもともと欠損するCETP欠損症の患者のほとんどは、HDL-C値が高値になります。HDLが100mg/dl以上になる高HDL血症は、動脈硬化抑制作用が強く、長寿につながると考えられてきましたが、CETP欠損症患者は同年齢の健常者に比べ、頸動脈の動脈硬化が進んでおり、冠動脈疾患を有していたり、長寿でないことが判明しました。CETP欠損症に伴って高値になったHDLは、コレステロールをため込んで大きくなり、コレステロール引き抜き機能が落ちた機能不全HDLといえます。
HDLが機能不全になるのは、炎症や酸化が原因といわれています。例えば、喫煙はLDLとともにHDLも酸化します。HDLの量のみならず、質にも注目すべきといえます。
しかし、機能不全HDLを測定するためのキットはまだ開発されていません。今後、機能不全HDLが日常臨床でも測定できるようになれば有用であり、開発が望まれています。
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