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血液に抗凝固剤を加えて凝固しないように放置すると、やがて赤血球が試験管の底に沈み、血漿の一部が上方に分離されてきます。この現象を赤血球沈降現象または赤沈(erythrocyte sedimentation)と呼び、一定条件下で赤沈の起こり方を見るのが赤血球沈降速度または赤沈値(erythrocyte sedimentation rate:ESR)です。
現在、わが国で行われているのはWestergren法でICSHにより国際標準測定法が提案されています。
赤沈は一見簡単な現象ですが、その本態について完全に解明されているわけではありません。また、血漿の性状と赤血球塊の大きさに左右されます。
正常の血液では、赤血球同士が陰イオンとして互いに反発し合い、凝集塊を作ることがほとんどなく、ある程度粘りのある血漿中を速く落下しえないため赤沈値も小さくなります。
赤沈の亢進している血液について経時的に赤沈値を観察すると三相に分けることができます。
・第一相:赤血球の連銭形成が進行している時期。初期の5〜25分間でみられ、赤沈は緩やかです。赤血球の凝集塊を作るのに大きな役割を果たすのはフィブリノーゲン・免疫グロブリン・α−グロブリン成分などで、これらが病的に増加すると赤沈値は亢進します。逆にアルブミンは抑制的に働くことが知られています。
・第二相:急速に沈降する時期。いったん連銭形成によって大きな赤血球塊ができると、Stokesの式から明らかなように、凝集塊の半径の自乗に比例して急速に沈降します。
・第三相:赤血球の沈積期。赤血球塊の沈降が進むと赤血球層の密度が高くなり、逆に沈降速度が遅くなります。
基準値:男1時間値15mm(高齢者では20mm)
女1時間値20mm(高齢者では30mm)
赤沈値亢進の病態
1)赤血球数の減少
・血液希釈状態
・循環血漿量の増加:妊娠
・貧血
2)フィブリノーゲン・α−グロブリンの増加
・妊娠
・炎症性疾患:感染症・膠原病活動期・悪性腫瘍など
・ストレス:大手術・外傷など
3)免疫グロブリンの増加
・多クローン性増加:肝疾患・慢性感染症・膠原病・悪性腫瘍その他
・単クローン性増加(Bence Jones蛋白を除く):骨髄腫・マクログロブリン血症・良性M蛋白血症など
赤沈値遅延傾向の病態(1時間値が2mm以下)
1)赤血球数の増加
・血液濃縮状態:脱水症
・多血症
2)フィブリノーゲンの減少
・無フィブリノーゲン血症
・線溶亢進
・DIC
3)免疫グロブリンの減少
・無γ-グロブリン血症(先天性および後天性)
※Stokesの式(液体の中で球体が沈降する速度)
V=(2/9)・[(d1−d2)・γ・γ/η]・g
V:沈降速度 γ:球体の半径 d1:球体の密度 d2:液体の密度
g:重力定数 η:液体の粘度
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