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腫瘍壊死因子-α(tumor necrosis factor-α:TNFα)は、腫瘍壊死作用を有する活性化マクロファージ由来のサイトカインとして見出され、その後、悪液質誘発因子であるカケクチンと同一物質であることが明らかとなった蛋白です。
1)アポトーシス・ネクローシスの誘導と血清m-AST・LDHの上昇
TNFαレセプターを介して細胞にアポトーシスを誘導する機能を持ち、レセプターに結合すると、情報の一部はミトコンドリアに到達し、ミトコンドリア膜に透過性転換を誘導します。その結果、細胞質内にチトクロームCが遊出し、チトクロームCはカスパーゼを活性化することにより核内のDNAを裁断します。これがアポトーシスの始まりで、同時に壊死に陥る細胞も現れて細胞内酵素・蛋白が放出され、血清中にはmAST・LDHが上昇します。筋組織にアポトーシス・ネクローシスが起こればCK・アルドラーゼ・ミオグロビンが上昇します。病態の把握から過剰な炎症性サイトカイン血症が疑われる場合にはAST・LDH・CKの上昇がアポトーシス・ネクローシスの良い指標となります。
2)フェリチンの誘導
血清フェリチンは網内系で作られ、鉄の調節蛋白として機能しており、このフェリチンを誘導する機能はTNFαが負っています。TNFαが著増する状況が生じると、血清フェリチン値は上昇するので、TNFα量の指標となります。
3)総コレステロールの低下と中性脂肪の上昇
TNFαは脂肪組織におけるLPL(lipoprotein lipase)活性を抑制します。LPLはトリグリセライド(中性脂肪の大部分を占める)を脂肪酸とグリセロールに分解します。LPL活性の低下はトリグリセライドの上昇、コレステロールの低下を促します。
AST・ALT・LDHの上昇は肝機能障害の指標とされますが、幹細胞に特異的な酵素はALTのみです。血清フェリチン値の上昇の後、ALTに対してAST優位の上昇を認め、LDHも上昇し始めたなら、末梢血の白血球を含む全身臓器のTNFαによる細胞傷害が進行しており、病態はDIC・多臓器不全(multiple organ failure:MOF)に向かって急速に進展していくと考えられます。
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